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思い出の北欧メタル名盤③:TNT 「INTUITION」

私が若かりし頃に感化された北欧メタルの名盤について書いていく記事の続き。

思い出の北欧メタル名盤:その①

思い出の北欧メタル名盤:その②:PROUD「FIRE BREAKS THE DAWN」

上記の記事では、北欧ならではの哀愁のメロディをもちつつもメタルらしいワイルドさとエッジを持っているところが好きだった、というアルバムを挙げました。そういうのが好きだからこそ、イングヴェイ・マルムスティーンの作品中で一番好きなのは「MARCHING OUT」だし、EUROPEのアルバムで一番好きなのは甚だ未完成であったけれど若々しい激しさがあった1stアルバム。

しかし今回は、そういったメタル独自のエキサイトメントよりも、「美しさ」に全振りだったことで魅了された名盤について書くことにします。これはもうジャンルや時代を超越した、全人類の永遠の宝物とするべき作品。TNTの「INTUITION」。

3rdアルバム「TELL NO TALES」がTNT初体験

TNTはノルウェー出身のバンド。いわゆる「北欧メタル」の勃興期から現在まで活動しているベテラン。

 

私がTNTの作品にはじめて触れたのは、1987年発表の「TELL NO TALES」でした。高校生のころだったか。

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猛烈にキャッチーな「Everyone's A Star」が始まり、トニー・ハーネルのクリスタルなハイトーンを聴いたとき、ファストでラウドなメタルを好んでいた若い私は「いい曲だけど、ちょっと軽すぎるかなあ~」なんて思ったのです。タイトル曲「Tell No Tales」ではまさにファスト&ラウドなメタルをやってくれていましたが、「10,000 Lovers」「Listen To Your Heart」なんかはあまりにポップで最初はダメだった。若くて耳が肥えてなかった私にはちょっと物足りなかった。

 

しかし聴きこんでいくにつれ、その超絶キャッチーなメロディと美しい音像に魅了されていくことに。メタルを聴いて「美しい」という感動を得る、という体験はそのときまであまりなかったかもしれません。今でもわりとそうだけど、私にとってメタルは「カッコいいかそうでないか」というシンプルな2択が重要な問題であって、美しさに心地よくなるメタル・・っていうのは想定外だったのです。

ゆったりとしたサウンドのなかで圧倒的存在感をはなつテクニカルなギターは超エキサイティング。しかし、マシンガン・ピッキングが炸裂しまくる激しさすら美しく心地よい。

しかし当時の私は、スラッシュ・メタルにズブズブに傾倒していった時期。「TELL NO TALES」はポップかつキャッチーな素晴らしい作品・・という認識を持っても、夢中になって聴きまくる、ということにはならなかった。

4thアルバム「INTUITION」

そんななか1989年になるとTNTは4作目のアルバムを発表。その時私は大学生となっていて、学校にはまともに行かずバイトしまくってレコード買いまくる・・という生活をしていまして、レコード買うお金はあったからもちろんそれも買いました。これはCDで買ったかな?

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前作「TELL NO TALES」も「美しい」と感じさせる音像でしたが、このアルバムは同じ方向性でそれをさらに極限まで突き詰めた・・という印象を受けました。もう「ポップだ」だの「メタルらしさが・・」だの、そんなことはどうでもよい。まるで讃美歌のような「A Nation Free」の壮大さに息をのんだ直後、「Caught Between The Tigers」のファンキーなリフが始まってハッとさせられます。キャッチーなコーラスも前作を踏襲。

続く「Tonight I'm Falling」はポップでキャッチーでかつ美しいラブソング。当時草創期にあったデスメタルに傾倒しはじめていた私であってもその甘美なメロディには酔わされた。これはもう凄すぎる。

 

「End Of The Line」もあまりにも美しいバラードで素晴らしいし、「Intuition」のキャッチーさは尋常じゃないレベル。

で、このアルバムのハイライトは、最後に入ってる壮大で感動的な「Wisdom」でしょう。

 

他人にはマネのできない独創的な響きのギターが超印象的。あとで知りましたがこれは通常のギターの倍のフレットをもつ特別なギターでプレイしたものであるらしい。

最後の「Wisdom」の神聖ささえ感じる荘厳さに陶酔したあと、CDが1曲目に戻るとまた「A Nation Free」の美しさにヤラれ、エンドレスで聴き続けることになる、奇跡的なクオリティのアルバム。このアルバムが出た少し後、生意気にも貯金をはたいて買ったばかりのクルマにコレのカセットテープを常備して聴きまくっていました。

スラッシュ・メタルばかりを聴いていた時期だったが・・・

クルマといえば、当時学生だった私は帰りが深夜になるアルバイトをやっていまして、通勤にはクルマを使っていたんですが、バイトの仲間にはクルマがなく深夜では帰る手段がない人もいて、私は帰りの交通手段のない仲間を家に送ってってあげてから帰宅するのが常になっていました。

当時からクルマのなかではメタルを聴きまくっていましたが、仲間にはメタル好きは少なかった。メタルに理解のある人が同乗者なら、その当時だとDEATHだのCELTIC FROSTだのDEMOLITION HAMMERだのをBGMにしていましたが、


メタルを知らない、当時流行ってた米米CLUBや爆風スランプなどを好んで聴くような人にこんなの聴かせたら「頭のおかしい人」と思われちゃう・・・と思って(今ならそんなこと気にしないけど、私も若かったから、とくに女の子と同乗するときはそれなりに気を遣った)、やはりそのときにはBGMをチェンジする必要があった。

そういうときに使ったのがTNTの「INTUITION」アルバムだったのを思い出しました。私の所有していた音源のなかでは底抜けにポップ、かつ美しい、でもしっかりメタルである音楽。そういえば好きだった女の子を口説き落とそうとようやくクルマに乗せたときもそれを流した記憶が。「INTUITION」アルバムを聴くと、すっかりオッサンになってつまらない人生を送っている私にも、ちゃんとそういう時期があったんだなあ~と切ない気持ちになったりもします。

と、その作品を聴くと自分の人生のさまざまなシーンが思い出されてくるような、そういった作品こそがまさに「思い出の名盤」というもの。その意味でTNTの「INTUITION」アルバムは、歴史的名盤であると同時に私にとっても永遠の名盤。棺桶に入れてもらうことが確定してます!

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