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BLIND GUARDIANの最高傑作は、誰がなんと言おうと・・・

80年代から現在に至るまで第一線で活動しているジャーマン・パワーメタルバンド、BLIND GUARDIANが、7年ぶり11枚目のアルバムを先日発売。

タイトルは「THE GOD MACHINE」。

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後述しますがBLIND GUARDIANの近作はあんまり好きじゃなくて、言い方悪いけど私の中ではとっくのとうに新作が出ようがまったく興味をそそられなくなったバンド。だからこれが出るって聞いても「あっそう」って感じで買うつもりはまったくなかったんです。しかし宣伝の謳い文句では「90年代のスピードとアグレッションを呼び醒ました」らしいから、「ほんとに?」と疑いつつ、念のため聴いてみるかと思って買いました。

相変わらず精密につくりこまれた感のあるサウンドながら、オーソドックスなメロディック・パワーメタル然とした、往年のスピードとアグレッションを意識したような曲が並んでいました!もちろん若いころのようなガムシャラに力任せに突進するパワーは感じられないものの、オーケストラだのなんだのを極力排除してメタルらしいメタルを聴かせてくれるのは嬉しい。

しかし・・・まだあまり聴きこんでないからあとになって言うこと変わるかもしれないけど、とりあえずちょっと聴いて一発で胸に迫ってくるような曲はあんまりなかったかなあ、と。上に貼った「Secrets Of The American Gods」は良かったけど、あとは悪くないけど良くもないくらいな印象。

とはいうものの。オッサンになってもスピードあふれるパワーメタルをやってくれてるのには心から「ありがとう!」と言いたい。その意味で買っておくべき作品でしょう。

で、これを機会に、彼らの最高傑作は?まだ彼らの作品を未体験の方に「まずはこれ!」って推すアルバムは?っていう問題について、思うところを書いておきましょう。

初期作はメロディック・パワーメタルの名盤だらけで、そのなかから選ぶのはなかなか難儀だが・・・

これが11作目か。デビューアルバム「BATTALIONS OF FEAR」が1988年。私が初めて彼らの音に触れた2nd「FOLLOW THE BLIND」が1989年。そのとき大学生だった私も生え際が後退したオッサンに。そんな長いキャリアの中で彼らは数々の名作、名曲を生み出してくれた。そのなかの最高傑作を選ぶとなると、「誰が何と言おうと」と銘打ったけれども、実はそんな簡単な話ではない。

ファンタジックでドラマティックなメタル、という点では終始一貫しているけれども、才能豊かな人たちであるだけに、ず~っと同じことを繰り返してきたわけではありませんからね。音楽性は微妙に変化するのは当然で、すると彼らにどんな音楽を求めるかによっても、どれが最高傑作かってのは変わってくる。

緻密に作りこまれプログレッシヴ、悪い言い方するとまわりくどい、メタルという枠からはみ出したサウンドが好きなら近作になるだろうし、勢いに任せた、わりとシンプルでキャッチーなパワーメタルスタイルが良かった!というのなら初期作になるでしょう。

私は当然ながら後者。HELLOWEENが生み出したメロディック・パワーメタルの金字塔的名盤「WALLS OF JERICHO」を聴いて「おお~!」と衝撃を受けた身としては、若さにまかせたパワーで押しまくりつつもキャッチーで胸に迫るメロディを満載していた初期作のほうが魅力的に感じる。

HELLOWEENの最高傑作は、誰が何と言おうと・・・

そのHELLOWEENみたいなバンド、という評判を聞きつけ、1989年発表の「FOLLOW THE BLIND」を聴いたのです。

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イントロに続く「Banish From Sanctuary」から、ゴリゴリのパワーメタルだったころのHELLOWEENがブアツいコーラスに欲を出してみました、みたいなアグレッシヴでスピーディ、勇壮な曲が目白押し。最大の聴きどころはラストに入ってる名曲中の名曲、「Valhalla」でしょう!

HELLOWEENを脱退したカイ・ハンセンがギターソロとヴォーカルで参加。カイのヴォーカルもソロも最高だが、思わずヘドバンしながらシンガロングしたくなるアツいメロディに胸が締め付けられる。

粗削りながらもHELLOWEEN直系のハイ・クオリティなパワー・メタル作品。これこれ、こういうのでいいんだよ。さかのぼって聴いた1stの「BATTALIONS OF FEAR」も同じ路線で良かった。

個人的な最高傑作はコレ!

そして1990年。3rdアルバム「TALES FROM THE TWILIGHT WORLD」に出会います。

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彼らの最高傑作はなにか、というのはけっこう難しい問題、と言いましたが、個人的にはこれを推したい。

押して押して押しまくるスピードとパワーはそのままに、さらにドラマティックさと増した傑作。のちの緻密に作りこまれたサウンドよりも、ストレートでアグレッシヴなサウンドのほうが好きな私としては、このあたりのバランスが最高。

コーラスはさらにブアツくなり、曲の完成度も前作までとは段違い。これもまさに「メロディック・パワーメタルはこうやって演るんだよ!」というお手本的大傑作。

 

どの曲も素晴らしいが、ふたたびカイ・ハンセンが参加した「Lost In The Twilight Hall」がいちばん好き。どこまでも客観的に考えればアルバムとしての完成度は次作「SOMEWHERE FAR BEYOND」のほうが上回ってるってのは明らかだけど、この曲があるがために私はあえてこっちを最高傑作と推しちゃう。

カイ・ハンセンのヤケクソ気味の絶叫とハンズィ・キアシュの雄々しいイケメン声の掛け合いがめちゃめちゃカッコいい。この味を出せるヴォーカリストはカイ以外にいませんね。カイのヴォーカルをヘタクソだという人もいるけどとんでもない。ヘタだろうがカッコよければそれでいいのであって、それを踏まえるのならカイはメタルヴォーカリストとして史上最高峰に位置するひとり。ラストの感動的名曲「The Last Candle」で聴かれるカイのギターソロ(聴けばイッパツでわかる)もカッコよすぎで、彼はまさにメタル史に名を刻む偉人と言えますな。

「SOMEWHERE FAR BEYOND」も完璧な名作だが・・・

そして1992年にはメタル史に燦然と輝く名作「SOMEWHERE FAR BEYOND」を発表。

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前作も凄かったのにこの作品ではさらにその上を行っちゃう完成度に。とてつもなくブアツいコーラスはもはやメタルの域を超えた荘厳さを醸し出し、映画のサウンドトラックを聴いてるようなドラマティックさにはもう平伏すしかない。スピードとアグレッションはそれほど後退してないけれども、緩急を心得た曲展開になったことによりさらにドラマ性を増した感が。

ピアノやアコースティック・ギターをバックにしっとりと歌う曲なんかもやってくれちゃって、コーラスの荘厳さも手伝って「QUEENがパワーメタルやってるっ」ていうような雰囲気に。「押しまくるだけのメタルじゃねえぜ」という幅の広さがさらに出た感じ。

その傾向は次作以降ますます顕著になり、近年の緻密に作りこまれたプログレッシヴなシンフォニックメタル路線へとつながっていきます。

↑目ん玉飛び出るっていうレベルの超絶名曲。こんなすごい曲がゾロゾロあるアルバム。初めて聴いたときからこれはもう歴史に残る作品になるだろうと確信。文句をつけるところはひとつもない完璧さ。

と、冷静に考えれば「最高傑作」はコレしかありえない・・・んですが、どこまでも個人的な好き嫌いと思い入れだけで言うならやっぱり「TALES FROM THE TWILIGHT WORLD」に軍配を上げるかな、という話。

 

これの次の5作目、1995年の「IMAGINATIONS FROM THE OTHER SIDE」も路線としては同じで、素晴らしい曲が揃ってたんですが、このころの私はブラック企業の社畜として寝る時間もない日々を送っていた時期でメタル聴いてる余裕がなかったし、いわゆるグルーヴメタルとかの台頭でメタルへの興味を失っていたんですよ。だからリアルタイムで聴けてなくて、それもあってあまり思い入れがない。

そしてそれ以降の作品は「やたら作りこまれて複雑だけど曲はイマイチ」ってのが続いて、新作が出ても追いかけなくなっていったのです。

 

そういうわけで、初期作はどれもこれも好きだし名作揃いではあるけれど、「BLIND GUARDIANのアルバムを1枚だけ棺桶に入れていい」と言われたら、私は「TALES FROM THE TWILIGHT WORLD」を選びます。聴きなおすたびに、メタルってほんとイイもんだよなあ、という感動を呼び起こされます!

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