USデスメタルの重鎮、DEICIDEの5年ぶりの新作「BANISHED BY SIN」がまもなくリリースされますね。楽しみ!
↓こっちのMVはまだ見ていなかったけど、キリストをサカナに酒をのんで楽しんでるというヤバい内容で、いつもどおりの冒涜デスメタルを期待できますね。
ニュー・アルバムについては聴いたら感想を書くつもりですが、これを機会にDEICIDEの旧作について聴きなおして、思うことを書いてみようかな、と。
→DEICIDE「BANISHED BY SIN」を聴いた!
すでに長い歴史をもつバンドだけに、個人的に大傑作と思う作品もあればそうでもないものもありますが、ずっと一貫しているのはどこまでも凶暴な真正デスメタルであること。「日和る」ということをしないバンドには忠誠を誓いたくなるのがメタルマニアというものなのですよ。
「究極のデスメタル」という触れ込みに惹かれて1stアルバムを手に入れた
私がDEICIDEの作品に初めて触れたのは大学生だった1990年か1991年ころ。バイトとパチンコばかりして勉強はまったくせず、ちょっとカネができると中古レコード店でメタルのレコードをドッサリ買って聴きまくる生活をおくっていました。
そんななかで出会ったのが彼らの1stアルバム、「DEICIDE」。
↑この1stは中古市場であまり見ない。見つけたら多少高かろうがソッコーで買うべし。所有するLPレコードにあるクレジットを見直してみたら、この「DEICIDE」の邪悪なロゴはグレン・ベントン(Vo&B)とエリック・ホフマン(G)によるものなんですってね。知りませんでした。
たしか雑誌かなにかの情報で「ポーズだけではないホンモノの悪魔崇拝・反キリスト」「究極のデスメタルバンド」という宣伝文句をみて、「もっと速く過激なのが聴きてえんだよ」という動機でスラッシュ・メタルにハマっていた私は「ぜひ聴いてみなくては!」という気持ちでしたね。
しかし当時はまだ「デスメタル」という概念がまだ完成されてなかったころだったと記憶。いま振り返ると、このDEICIDEを聴く前に私が触れていた「デスメタル」らしきバンドは、OBITUARY、それからDEATHくらいのものだったと思います。CANNIBAL CORPSEやMORBID ANGELはまだ聴いたことがなかった。
そのOBITUARYやDEATH、もしくはPOSSESSEDが「デスメタル」の元祖という言い方(POSSESSEDには「Death Metal」という曲もあったから)をされますがいまの感覚で聴くとPOSSESSEDはどう聴いても「デスメタル」ではないし、OBITUARYもDEATHもスラッシュ・メタルの延長線上にあるサウンドだった。
私もDEATHやOBITUARYを「デスメタル」とは認識してなかった気がするなあ。グォォ~っていうキッタない声で「死」だの「殺人」だの「地獄」だのをうたうスラッシュメタル、というふうにとらえていたような。当時は既存のメタルよりもさらに過激なものは全部いっしょくたに「スラッシュ」と括られることが多かったですからね。
いずれにしろ、「過激なスラッシュメタル」である(と私はとらえていた)「デス・メタル」の「究極」だってんだから、よっぽどスゴイんだろう・・という期待をもって聴いたのを覚えています。
1曲目の「Lunatic Of God's Creation」を聴いてブッ飛ばされてしまった。その禍々しさはまさに「デスメタル」。冒頭の「カチャン」というSEは(アルバム最後にもある)まさに「地獄の扉がひらいた!」という感覚をくれる。
これは当時としては最高にエクストリームでブルータルでダークなメタルでした。なにしろ速い。テンポはめまぐるしく変わんだけれどもリフの刻みはひたすら超高速をキープしててドラムスも手数が猛烈に多いから全編速いという印象になる。
狂気をはらむハチャメチャなギター・ソロを聴いて「SLAYERみたいだな」と思ったけれど、SLAYERと違った最大のポイントはやっぱりグレン・ベントンのヴォーカル。得体のしれない魔物が地の底で呻いているような低音と、その魔物が獲物にむかって致命の一撃を加えようとする瞬間の気合の咆哮のような高音のデス声。はじめて聴いたときはヴォーカルをだれかほかのメンバーとふたりでやってるんだろうと思いましたが、こういうのを聴いたのももちろん初めてでしたから衝撃でしたね。
さらにスゴイのは、当時としては「究極」といってもそれが誇大広告にはならなかったくらいのものすごいスピードとアグレッションを誇りつつも、曲は驚くほどキャッチーだったということ。SAFFOCATIONにしろMORBID ANGELにしろ、そのへんが一流たるところだった。
→思い出の名盤:ブルータル・デスメタルはここから始まった。SUFFOCATION「HUMAN WASTE」。
キャッチーな曲が詰まっているから、全10曲、まったくダレることなく最後まで没入させられてしまう。これだけ凶暴なサウンドなのに「全部同じ曲」には全然なってないところが、並みのバンドとは格が違うところ。
そういえばグレン・ベントンは「(キリストが復活したのが33歳の時だからその逆をやるために)33歳になったら自殺する」と公言していましたね。33歳になっても自殺せずそれを撤回したらしいけれど、正しい判断だったと思いますね。33歳で自殺しちゃってたらその後の素晴らしい作品群は生まれなかったかもしれませんからね。
それはともかく、1992年、速くてアグレッシヴでブルータルでキャッチーな「究極のデスメタル」スタイルをさらに突き詰めた傑作が出ます。
個人的に「最高傑作」と推したいのはコレ!
それが2作目、「LEGION」。
このころには私もいろいろな「デスメタル」と呼ばれるものを聴き込んでいたと記憶。一般的にはメタルがどんどんつまらなくなってきて、ますますアンダーグラウンドなデスメタルに傾倒していってました。
だからこの2作目もものすごく期待して、これはたしかCDで購入。
1曲目の「Satan Spawn,The Caco-Daemon」はデスメタル史に燦然と輝く必殺名曲で、もうはじめて聴いたときはひっくり返った。メロディはまったくないのにドラマ性を感じさせる曲展開がカッコよすぎる。
演奏テクニックがさらに向上し全編圧倒的テンションを維持しつつ猛スピードで駆け抜けていく。複雑に展開するリフのうえにメロディのない邪悪なギターソロとグレンの咆哮がのり、エクストリームこのうえないのに不思議なキャッチーさがある、という作風は前作と同じながら、それがさらに研ぎ澄まされている。
前作では「SLAYERみたい」と感じる部分が少なくなかったのに対し、この「LEGION」で現在まで続くDEICIDEのオリジナリティ、「らしさ」というものができあがった、という印象を受けます。
わずか30分程度、8曲という内容ながら、その中身の濃さは圧倒的で、個人的にはこれを彼らの最高傑作として推したい。いや次の「ONCE UPON THE CROSS」もその次の「SERPENTS OF THE LIGHT」も名作ではあるんですけどね、90年代なかばにさしかかってくると私自身が個人的な理由でメタルから遠ざかっていた時期になりリアルタイムではあまり聴き込まなかったので、「LEGION」のほうが思い入れが深いのです。
「ONCE UPON THE CROSS」や「SERPENTS OF THE LIGHT」などこのあとの作品についてはまた改めて書いていきましょう。とりあえず近日発売の新作に期待!