スラッシュ・メタルの帝王、SLAYERの名盤をふりかえる記事の続き。
今回は1990年発表の5枚目のアルバム、「SEASONS IN THE ABYSS」。
前作「SOUTH OF HEAVEN」が(今はそう思わないけど、当時は)SLAYERらしくないスローさだったので、実は「今回は大丈夫なの?」と疑心暗鬼だったのです。
しかしSLAYERの新譜となれば当然買わなければならないので買い、聴いてみますと・・・これが素晴らしい内容でした。
初期SLAYERの集大成的な作品
3作目「REIGN IN BLOOD」で究極的なスピードとアグレッション、4枚目「SOUTH OF HEAVEN」では一転してヘヴィさとキャッチーさに重点を移したSLAYERは、この5枚目ではその両方のいいとこどりをしたかのような、バランスのとれた作風となります。
オープニングの「War Ensemble」は、「Angel Of Death」同様にまわりくどさ一切なし、SLAYER独特の圧倒的疾走感をストレートに叩きつけてくれて、「オっ!前作とは全然違うじゃん!」と色めき立ちました。
アグレッシヴでタイト、かつキャッチーなデイヴ・ロンバードのドラムスの凄まじさはますます研ぎ澄まされている感じ。
トム・アラヤのヴォーカルはスピードにのりつつも「SOUTH OF HEAVEN」同様にちゃんと歌っている。
そして間髪入れずに「Blood Red」(この曲はモロに「SOUTH OF HEAVEN」の曲っぽい)へ続く流れもカッコいい。
速いのにメロディアス。リフはキャッチー。これがSLAYERの目指していたサウンドか。「速い曲をやるのは飽きた」SLAYERがついに到達したSLAYERの最終形態、集大成・・・という印象をもちました。
タイトル・トラック「Seasons In The Abyss」はメロディアスなSLAYERの極致ともいえる曲。この曲で初のMVをつくったりしてます。
初来日公演を観た
このアルバムに伴うツアーでついにSLAYERの初来日が実現。
学生だった私は東京での公演を2回観に行きました。
たしか「Reign In Blood」から始まって、間髪入れず「Black Magic」へ(この流れ最高にカッコよかった)。それが終わってはじめてMCが入り、トム・アラヤが「Waaaaaar!! Ensemble !!!!!」とデカい声で叫んで「War Ensemble」になだれ込んでいったと記憶しています。
驚いたのは、「War Ensemble」が始まったとたんに、オーディエンスがシンガロングする声が明らかに大きくなったことでした。サビだけでなく最初から最後までみんな歌っていたのをおぼえています。
「Spirit In Black」とか「Skeletons Of Society」などでもそうで、今考えてみるとそれはやっぱり、「SEASONS IN THE ABYSS」の曲がそれだけキャッチーで歌いたくなるメロディにあふれていたからなんだろうな、と。
この初来日では私の好きな「HELL AWAITS」からの曲が少なかったのがちょっと残念(たしか、「Necrophiliac」と「At Dawn They Sleep」だけだった)だったのですが、その「HELL AWAITS」のころにはアンダーグラウンドな存在として扱われていたSLAYERのプレイが日本で観られた・・というだけで感激。死ぬほどヘドバンしまくって、2回目を終わった次の日には体中痛くて起き上がれなくなりました。私のそれよりも激しいヘドバンを40年もやりつづけたSLAYERはほんとうに凄い。改めてお疲れさまでした、ありがとうと言いたい。
このあとの作品は・・・
次作「DIVINE INTERVENTION」が発表されたのが1994年。
実はそこから先のSLAYERの作品はあまり気に入っているものがないのです。
私はこのころには就職し仕事が忙しく、そのうえ90年代に流行ったグランジだのオルタナティヴだのが大嫌いだったのも手伝ってメタルから遠ざかっていったので、SLAYERの作品といえども「必ず買う」というようなことがなくなりました。
もちろんそれでも後になってすべてちゃんと聴きましたけどね、はっきりいって「SEASONS IN THE ABYSS」までの5枚に肩を並べるような作品はなかった・・・と感じています。
しかしともかく初期の5枚はすべてが私にとって青春時代を彩ってくれた名盤。メタルが好きならすべて揃えておくべきでしょう!
関連記事:
→思い出の名盤:SLAYER「SOUTH OF HEAVEN」
→思い出の名盤:スラッシュ・メタルの究極・・・SLAYER「REIGN IN BLOOD」!!