私が純朴な少年だったころに感化されたメタル作品を
振り返る記事の続き。
1985年にMUSIC FOR NATIONSが出したコンピレーションアルバム
「SPEED KILLS ~THE VERY BEST IN SPEED METAL~」が
スラッシュ・メタル初心者だった私のバイブルとなった、という話を書きましたが、
→思い出の名盤:スラッシュ・メタルへの傾倒を決定づけられた名作コンピレーション~「SPEED KILLS~THE VERY BEST IN SPEED METAL~」
今回取り上げるPOSSESSEDもそこに1曲(「Pentagram」)を提供していました。
デスメタルのパイオニア的存在のひとつ
POSSESSEDは、80年代半ばから活躍、現在も活動している
アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ出身のスラッシュ・メタルバンド。
80年代のアメリカ西海岸のスラッシュ・メタルというと、
EXODUSやMETALLICAなどのいわゆる「ベイエリア・スラッシュ」が思い浮かび、
POSSESSEDもそのうちのひとつ、
ではあるんですが、音楽性という点ではそのなかでも特異な存在でした。
それは、悪魔や地獄やオカルトを題材にした歌詞や、
ひたすらガナり吼えるスタイルのヴォーカルが、
ほかのバンドとは一線を画していたという点。
すぐあとにDEATHとか、似たスタイルのバンドも出てくるのですが、
アメリカにおけるデス・メタルの先駆的存在だった・・・
というわけで、スイスのCELTIC FROSTやスウェーデンのBATHORYと並んで、
デス・メタルを語る上では避けて通れないバンド。
カッチリ決まってない演奏なのにカッコいい、奇跡的バランスの名作
デス・メタルのルーツ、という意味においても重要、
そして私が衝撃を受け聴きまくったのが
1985年発表の1stアルバム、
「SEVEN CHURCHES」。
「SPEED KILLS」に提供されていた「Pentagram」を聴いて、
アルバムを欲しい・・でも(当時はガキだったので)カネがないのでどうしよう・・・
と思っていたところへ、西新宿のEDISONに行ったときにこれが大音量で流れていて、
うわあ・・やっぱこれスゲエ・・・と思って有り金をはたいて買ってしまった
思い出のレコード。
レコードに針を落とすと、映画「エクソシスト」のテーマが静かに流れてきて
恐怖感を演出。1分後には怒涛のスラッシュ・メタルが炸裂します。
普通なら「おお~!!」という感じでヘッドバンギングするところなんですが、
このバンドの場合はドラムスがヘタ、という致命的な問題があって、
あんまり気持ちよくノレなかった。
それどころか、徹底的にモタりまくるドラムスに、笑いがこみあげてくるくらい。
この作品を発表したころ、メンバーはみんな高校生だったらしく、
それを考えれば演奏がヘタなのは納得がいくんですけど
(SODOMやDESTRUCTIONやKREATORもデビュー時はそんなもんでしたよね)、
このバンドが凄かったのは、高校生でありながら
そうとは思えないテクニカルなギター、
あまりにも特徴的、独創的、変態的なリフ。
独自のスタイルをすでにもっていた曲とヴォーカル。
そして、テクニカルなギターにモタりながらも絡んでいくドラム、
という甚だ未完成なサウンドが、なぜかものすごくスリリングに感じられた、ということ。
イントロのギターで「オっ!」と思っても
ドラムスが入ってくると「あれあれあれ~」となってしまう。
冒頭のハイハットのカウントがすでにズレてるし。
そんな曲ばっかりです。
しかし・・・崩壊寸前な状態で突っ走る・・・これがスリリングだった。
ギターがとにかく上手いのでそれで助かってるというのもありますが、
曲自体が独創的で、しかも当時のアメリカのスラッシュ・メタルバンドとしては
最高峰の邪悪さをもっていた、からでしょう。
ヴォーカルの声質のカッコよさは、いまのデスメタル界にも並ぶ人はいないかも。
後進のデス/ブラック・メタルに多大な影響を与えただけあって
のちにPOSSESSEDの楽曲をカバーしたバンドもたくさんいて、
みんなPOSSESSEDよりも演奏が
上手いバンドばっかりだったのにもかかわらず、
POSSESSEDの邪悪な雰囲気、スリリングさに
敵う魅力を出せたバンドはいなかった。
メタル、ていうか音楽というものは、
上手けりゃあいいというものではない、というのがわかります。
演奏が超絶上手いと、なんか「安心感」みたいなものを感じちゃって、
ブルータルな曲でもあんまりエキサイトできないバンド、ってけっこういるんですけど
(私にとってはARCH ENEMYとかがそれ)、
デスメタルはそれじゃあいけないわけです。
この作品のあと、
アルバム「BEYOND THE GATES」(86年)、
EP「THE EYES OF HORROR」(87年)
を出し解散、いちど活動を再開するもまた解散、
2007年にまた再結成されていまだ活動中らしいです。
新作を製作中、という話もありますが・・・。
→POSSESSEDの復活作「REVELATIONS OF OBLIVION」を聴いた
ともかく、現代の基準で言えばクオリティは褒められたもんじゃないけれど、
デスメタルのルーツのひとつ、という意味で
エクストリームなメタルを好きな人は聴いておくべき名作です!