私がメタルにハマりだしたのは中学生のころ。
同じころにヘヴィ・メタル専門誌「BURRN!」が創刊され、
JUDAS PRIESTやIRON MAIDENが大人気、
METALLICA,ANTHRAX,SLAYER,EXODUS・・などのスラッシュ・メタルバンドが
アンダーグラウンドなシーンに登場し始めました。
今回は、そのころ一生懸命読み漁っていた音楽雑誌のことと、
それに絡めて、音楽雑誌のディスク・レビューについて思うことを書いてみます。
メタル専門誌「BURRN!」の凋落
中学生のころにヘヴィ・メタルという音楽を知り、
そのカッコよさに目覚めた私は、「BURRN!」をむさぼるように読み、
「BURRNIN' VYNYL」(当時のディスク・レビューページはたしかこういう名前だった)
で高得点をとった作品は貸レコード店で借り、
そのなかでもさらに期待度大だと思ったレコードは小遣いをはたいて買いました。
それだけでなく、高校生になってバイトを始めてお金に余裕ができはじめると、
レビューで10点とかヒドイ点数だったレコードも買うようになりました。
そういうことを繰り返すうちに、だんだん、
「コイツのレビューは信用できない」とか、
「この人は俺とは好みが違うから、高得点でも信用できない」
とか、いろいろなことがわかってきます。
レビューで高得点だったから買ってみたら全然たいしたことなかった、とか、
逆に30点とかつけられていても私にとっては「スゲー!」という内容だったりするわけです。
ちなみにEXODUSのデビュー・アルバム「BONDED BY BLOOD」はたしか50点くらいだったし、
BATHORYの3RD「UNDER THE SIGN OF THE BLACK MARK」も39点くらいを
つけられてクソみそに書かれていた記憶がありますが、
私はどちらも震えるほどカッコいいと思いました
(まあ、EXODUSはともかくBATHORYは・・という人もいるかとは思いますけど)。
→思い出の名盤:「スラッシュ・メタル」の定義・・・「BONDED BY BLOOD」/EXODUS
→思い出の名盤:ブラック・メタルの聖典! BATHORY「UNDER THE SIGN OF THE BLACK MARK」
amazon.co.jp Under the Sign of the Black Mark
それはともかく、悪い点数をつけてクソみそに言うのは別にいいのです。
個人の感性や好みがレビューに出るのは悪いことではない。
それに、時代背景というものも影響するし。
実際、BATHORYの「UNDER THE~」は、当時のシーンの状況から考えれば
10点とかでもおかしくなかったわけです。だれもあんなことやってなかったんですからね
(いまやマネしてるバンドが吐いて捨てるほどいるスタイルを、80年代半ばにすでにやっていたところにBATHORYの、いやquorthonの偉大さがあったんですね。)。
問題は、最近の「BURRN!」誌をたまにみると、
「たいしたことないのに(大人の事情で)いい点をつけている」ということです。
私がむさぼり読んでいたころはそういう傾向は見えなかったけれど、
「BURRN!」だけでなくいまの音楽誌はほとんどすべて、
批判らしい批判はいっさいないですね。
最近は同誌を全然買わないのでわかりませんが、
家に残っていた2014年6月号のDISC REVIEWをみると、
国内盤29枚のうち、80点未満はたったの2作品、しかも75点と79点。
輸入盤も67点というのが1つあるものの、軒並み80点前後がつけられています。
もちろん、点数だけをみて云々言うのはいけないというのはわかっています。
でも、レヴューの文章を吟味したところで、
買うべきなのか買わずにおくべきなのかがわからないというか、
褒めていても(けなしていても)当たり障りがなさすぎて、
なにひとつ参考にならない、という印象しか持てないんですよね。
昔のように、よくないものには「塩化ビニールの無駄づかい」「耳から血が出そうになった」
「中身はウ〇コ!」「ヴォーカリスト交代!」「もう二度と聴きたくないとだけ言っておこう」
とかハッキリ言ってくれれば、「これは買うのやめよう」となり(逆に聴いてみたくなるんですけどね)、
そういうレビューがあってこそ、いい点で褒めているものがあれば
「これは買ってみようか」と食指が動くわけです。
広告主であるレコード会社に気を使ってこうなるんでしょうけど、
これでは、たいしたことない作品もそこそこ売れるかもしれないが、
ものすごく素晴らしい作品もたいして売れないんじゃないか。
そして、シーンはますます停滞するのでは。
演歌・歌謡曲雑誌も同じ状況
この、「大人の事情で」どんな作品も雑誌などではとりあえず褒められる、批判されることがない、
というのは、演歌・歌謡曲も同じ、ていうかそっちはもっとヒドイですね。
こっちの世界にはネット上の個人のブログなどですら、
なんでもかんでもとりあえず褒めるものしかない。
ディスク・レビューはただの「新譜カタログ」で、
買うべきか買わないべきか、という参考には毛ほどもならない。
このように音楽雑誌がただのカタログ化をしちゃってるので、
売れなくなってきているのも当然だと思います。
情報だけならネットで事足りるし、
新譜についてのリスナーの正直な感想は
Amazonのレビューや個人ブログのほうがよほど参考になる。
AKB系の、毎度毎度同じようなノッペラボウな曲が毎度毎度変わらずに売れるのは、
「毎回同じ曲ばっかで客をバカにしてんの?」
という批判が展開されないからじゃないかと思うんですよね。
そして、売れるから、つくる側はもっといい曲にしようと努力しない。
そしてさらにつまんない曲が量産される。
「CDが売れない」というのは時代のせいじゃなくて、
ただつまんないものしか出てこないからじゃないのか。
つまらないものをつまらない、と言わない、言えないというのは、
ほかにもいろいろ困ったことを引き起こすと思います。
また次の記事で書きます。