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ただの「紹介」みたいなディスク・レビューの罪深さ

前の記事→音楽誌のディスク・レビューはただの新譜カタログ の続きです。

ネットの普及もあり、私も最近は音楽雑誌を買うことはあまりなくなってきまして、

新譜を買うかどうか迷うとき、Amazonの商品レビューとか個人のブログとかを参考にしたりとか、

もしくはYOU TUBEでリード・トラックだけをチェックし、

ものすごくよさそうなものを買う・・みたいになっています。

責任ある記事を参考にしたいが・・・

ただ、YOU TUBEはともかく、

Amazonのレビューや個人ブログなどは匿名ですから、

やはり信頼性は低くなる。

しかし、匿名ゆえにホンネがわかる、という部分もあって、

信頼度が低いからそれが悪いというわけでもないですね。

要は鵜呑みにしなければいいわけですが、

 

対していまの音楽雑誌のディスク・レビューはどうか。

多くの場合は記名のうえで書いていますから、

それなりに責任をもって書こうとはしているはずで、

そういった意味ではブログなどよりは信頼性は高い。

しかし問題なのは、広告主であるレコード会社やアーティスト本人たちへの配慮など、

カネなどが絡むさまざまな事情により、

たとえほんとうは「ゴミ」と思っても「ゴミだ」と書けない、ということでしょう。

 

これは、雑誌をつくる人たちの姿勢の問題なのでは。

広告主を満足させたいのか読者を満足させたいのか。

 

私は雑誌というものがどのようにして儲かっているのか知らないのでわかりませんが、

利益を考えると読者が払うカネよりも広告収入のほうが大事なのかもしれない。

雑誌もビジネスとして利益を追求しなければならないわけで、

広告主の顔色を窺って「こんなアルバムはハナクソ」とか言えないのは

やむを得ないケースもあるでしょうが、

そんなことばかりして読者にウソばかりついていれば読者は減り、

読者が減れば結局は広告主の不利益となり、

広告収入も減る・・ということにはならないんでしょうか。

なにも知らなかった中学生のころを思い返してみると

私が何も知らないガキだったときに

どれだけ音楽雑誌のお世話になったかを思い返してみると、

良いものを良い、だめなものをだめ、と書かないディスク・レビューの

罪深さをものすごく感じます。

 

私が中高生のころにメタル専門誌「BURRN!」をむさぼり読み勉強したことは前の記事に書きました。

JUDAS PRIESTやIRON MAIDENを聴き、メタルにのめり込むきっかけをもった私は、

貸しレコード店でレコードの帯などをみて「ヘヴィ・メタル」と書いてあれば

なにもわからなくてもとりあえず借りてみたりして、

徐々に知識を広げていきました。

そして、

「もっと刺激的なメタルが聴きたい!」

「もっと速くて重いメタルが聴きたい!」

という気持ちも出てきて、

当時METALLICAやSLAYERが出てきて生まれてきた

スラッシュ・メタルにハマっていきます。

 

METALLICAやSLAYERは、貸しレコード店をはしごして

(まだバイトとかできなかったので、買うという選択肢はなかった)

なんとか聴くことができましたが、

「BURRN!」を読んでいると、高評価された作品が輸入盤だったりして、

貸しレコードではまったく追いつかなくなってきます。

 

当時はネットがありませんでしたから、

YOU TUBEで聴いてみるとかできないし、情報は雑誌で得るしかなかった。

「BURRN!」の記事やディスク・レビューをみて、

EXCITER聴いてみてえ・・とか、

SODOMの坊ちゃん刈りのヴォーカルはどんな声なんだろうとか、

RAZORが凄いらしいとか、

HALLOW'S EVEはMAIDENっぽいらしいからレコード欲しいな、とか、

いろいろ想像しながら、

なんとかして買いたい、手に入れたいと考えます。

 

このころは中学から高校にあがるころで、まだ親からもらうカネしかありません。

 

買うとすれば、月に1枚とかしか買えないのです。

そうすると、買うべきレコードはなにか、ということを真剣に吟味することになります。

 

そこで参考にするのはやはり「BURRN!」のディスク・レビューだったのです。

カネのないキッズの心情を考えよ

まだ働けない私に買えるレコードは月に1枚が限界。

しかし、欲しいものはいくらでもある。

貸しレコード店ではメタル系が少なく満足できない。

スラッシュ・メタルはなおさら入らない(METALLICAの「KILL 'EM ALL」やSLAYERの「SHOW NO MERCY」などは、電車の乗って30分以上かかる貸しレコード店まで行って借りました)。

 

そこで、なにを買うべきか一生懸命考える。

私の場合、「BURRN!」や「MUSIC LIFE」で高評価だったものを買ったのですが、

こういうおカネのないファン、キッズのことをほんとうに考えるなら、

自分が「こんなもんクソ」とか「退屈」とか思っているものを、

テキトーな美辞麗句を並べ立てて褒める、というのは、

犯罪としかいいようがないと思うのです、

ほかにもある!提灯レビューの悪影響

メタル・キッズになる入口に立ったような中学生が、

雑誌で褒められていたCDを、小遣いをはたいて買った。

しかし、どう聴いてもそんなにカッコいいとは思えなかった。

何枚も同じように買ったが同じだった。

まずここで「メタルなんてつまらん」となり、

ファンが増える可能性がつぶされる。

 

別のパターンもあるでしょう。

褒められている作品を何度聴いてもつまらないけど、

ああ、ボクの耳が肥えていないんだな。

こういうのがカッコいいんだ、って評論家や編集者が言っているんだから、

そっちが正しいに決まっている・・

と、思い、ガマンしてつまらん音楽を聴き込み、それがカッコいいんだ、と思い込む。

そういう人が成長してミュージシャンとかになって、

自分が子どものころから聴き込んだ、

「カッコいい(と思い込まされた)」音楽をつくる。

そういう人がたくさん出てきて、シーン全体がどんどんつまらなくなる。

 

現役でがんばっているミュージシャンへの悪影響もあるでしょう。

ファンからすればなんだこれ、みたいな作品でも、

メディアがほめてそこそこ売れれば、

つくる側は「こんなもんでいいんだ・・・」と思ってしまい、

結果、そこらじゅうつまらない作品ばかりがあふれる。

いま、CDが売れない、という状況なのは、

実はそれが原因なんじゃないのか。

CHILDREN OF BODOMなんて私的には全部つまらないけれども、

BURRN!はじめメディアが褒めるもんだからいつまでたってもそのまんま変わらない、

というかどんどん劣化しています。

若いファンに、こういうのが「カッコいいメタル」なんだ・・と思われてしまうのは

ほんとうに害悪しかないと思うんですよね。

 

とにかく、提灯レビューを並べた雑誌で儲けようとするのは、

長い目で見ていいことはないと思うのです。

演歌・歌謡曲はともかく、メタルはこだわりをカタチにしたような音楽であり、

主義主張のないメタル雑誌なんて存在価値はないでしょう。

今後変わってくれることを期待しています。

 

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