スラッシュ・メタルの名盤の話をどんどん書いていく記事の続き。
SLAYERの「HELL AWAITS」に出会ってからスラッシュ・メタルにハマっていった私。
→思い出の名盤:スラッシュ・メタルとの出会い・・「HELL AWAITS」/SLAYER
その後バイトを始めてレコードを買うカネができると、電車を乗り継いで西新宿の輸入盤店におもむき、国内盤の出ていない(つまり、貸しレコード店ではなかなか手に入らない)バンドのレコードを買い漁るようになりました。
そんななか、レコード店の店内で聴いたこのアルバムがあまりにインパクトが凄くて、迷わず衝動買い。私のメタルライフにも、現代のエクストリーム・メタルバンドたちにも絶大な影響を与えたアルバムです。今回はそれについて。
ジャーマン・スラッシュメタルの大御所
KREATORはドイツ出身のスラッシュ・メタルバンド。DESTRUCTION、SODOMと並び、80年代のドイツのスラッシュ・メタル草創期から活動する、同国の代表的バンド。もはや大御所的な存在ですね。
KREATORはこれまでに14枚のアルバムを発表しています。90年代に音楽的に迷走しちゃった時期もありましたが(これには80年代から活動していた多くのスラッシュメタルバンドが陥った。METALLICAはそれで売れちゃったわけですけど私に言わせればあれは完璧に「迷走」)、ここ20年ほどはアグレッシヴなスラッシュ・メタル路線を貫いてくれてますね。
そのKREATORの最高傑作はなんだろう・・というのは、かなり意見がわかれる問題でしょうね。
私も「あれもこれも最高だろ!」となっちゃう。3rd「TERRIBLE CERTAINTY」も超カッコいいし、甚だ未熟そのものだった1st「ENDLESS PAIN」も好き。完全にスラッシュから離れちゃってた「ENDORAMA」も実は好き。アグレッシヴかつキャッチーだった「PHANTOM ANTICHRIST」も捨てがたい。
そんなふうに、長い歴史を誇り名作も多いバンド。
しかし、私に言わせれば最高傑作は誰がなんと言おうとも・・・
1986年の2ndアルバム「PLEASURE TO KILL」
私が「KREATORの作品のなかから棺桶に入れるものを1枚選べ」と言われたら、もうこれしかありえない。2ndアルバム、「PLEASURE TO KILL」。
当時月イチくらいで見に行っていた西新宿の輸入盤店で流れていたのがこれ。
も~うこれにはブッ飛ばされた。すんごいアグレッション。爆発的エネルギー。「もっと速い曲、もっと速いバンドはいないのか!」という動機でスラッシュメタルのレコードを買っていた私ですから、「コイツはスゲエ!」と倒れましたね。
よくよく聴くと演奏はヘタクソで、やろうとしているスピードに演奏力が追いついてないんですけど、そんなことはどうでもよかった。ひたすら前のめりのパワーにKOされ、1ミリも迷わずに買いました!
裏ジャケには当時のB級スラッシュ・バンドにありがちな変顔とポーズをキメた若き日のミレ・ペトロッツァはじめメンバーの姿が。右端のギタリストのウルフ(故人)は元SODOMで、このアルバムでは弾いてない。
家に帰ってレコードをプレイすると、美しいアコースティック・ギターとシンセサイザーからなる「Choir Of The Damned」が流れてきます(いまYOU TUBEなどにあがっているものは、エレクトリック・ギターのダークなメロディが最初に入ってるんですけど、これはなんなの?どっか再発などのタイミングで録り直したのかな?ちょっと知らなかった)。
例によってこれが終わったら爆走スラッシュがくるんだろ・・という予想通り、美しいイントロに目を細めた瞬間、雪崩のように「Ripping Corpse」が襲ってきます。
ミレのシャウトのイッちゃってる感がなんともステキ。
それに速い。っていうか、速い曲をきちんと速く演奏できてないのにもかかわらず完全破壊の快感が味わえちゃうところがなんとも凄い。このあたりが凡百のヘタクソなバンドとは違ったところなんでしょうね。POSSESSEDにしろDESTRUCTIONにしろSODOMにしろ、ヘタなのにカッコいいという奇跡を実現できていた。
ヘタクソだったといっても当時彼らは高校生くらいだったんですから、それを考えればいかに才能豊かだったかがわかりますね。
その次もひたすら突っ走る「Death is Your Saviour」。この曲ほか、3rdアルバムまでは何曲かでドラムスのヴェンターがヴォーカルをとってます。この当時にかぎって言えばヴェンターのほうが声質的にはミレよりもカッコいいかな。しかし、ドラムも不安定なくせにヴォーカルを兼任しちゃおうという無謀さは、まあ若かったからなんでしょうね。
そして間髪入れず、若干不安定なタムロールからそのまま全速力で突っ走る「Pleasure to Kill」!この流れカッコいい。
↑いつのまにオフィシャルビデオなんてつくってたんだ。音は昔の音で、冒頭にちょっと音を足したりとかノコギリ音や女性の悲鳴を入れたりとかしてますね。
個人的に「Pleasure to Kill」はKREATORの楽曲群のなかで最も好きな曲。よく聴くとバスドラとかかなりモタってるんですけど、そんなことはどうでもいい。カッコよければ文句ナシ。
次の複雑な曲構成の「Riot of Violence」もヴェンターがヴォーカル。ここでちょっとスローになるけど、アグレッションは後退しない。落ち着きなくバタバタするヴェンターのドラムはここでも不安定だけど、不思議と「あ~あ・・」という残念さはない。それどころかその不安定さがスリリング。
理屈抜きで「カッコいい」と震えられる・・のが名盤の条件
あとの曲はぜひとも音源を手に入れて聴いていただくとして、細けえことはどうでもいいんだよ、速くてカッコよければ!!と言わんばかりに暴れまくるサウンドは理屈抜きにステキ。
問答無用、四の五のいわずにとにかく聴いて震ればいいんだよ、と自信をもって言える・・というのが、スラッシュに限らずメタルの名盤の条件だと思うんですよね。METALLICAが堕落したのはそこを忘れたからであり、KREATORも一時はそれを忘れた。
続く3rdアルバム「TERRIBLE CERTAINTY」では演奏技術とプロダクションが飛躍的に向上し、トータルとしてのクオリティは圧倒的に上がりました。「Blind Faith」なんかは猛烈にカッコいいし素晴らしい作品だったのですが・・・
私があの世でも聴きたいと思うのはやっぱり「PLEASURE TO KILL」。
もし未聴なら、とにかく手に入れておくことを強くオススメしておきます!