希代の「ヒットメーカー」として知られた作曲家の筒美京平氏がお亡くなりに。
ご冥福をお祈りいたします。
遺されたヒット曲はあまりに膨大な量、その総売り上げ枚数はなんと小室哲哉よりも多く、日本の音楽史上トップだそうです。
私ごときではその偉大な足跡を云々することは畏れ多いことだし不可能ですが、私が個人的に好きだったり思い出のある曲などについて書いておこうと思います。
最大のヒットは「魅せられて」
筒美氏の作曲した曲で売り上げ枚数が最も多かったのはジュディ・オングの「魅せられて」(1979年)だそうですよ。
このとき私は小学4年生くらい。「ザ・ベストテン」が圧倒的人気を誇っていたころで、私も夢中になって観ていましたから、そこで流れる曲は自然におぼえました。「魅せられて」もそのなかのひとつ。
子どもだったので、そのときは曲そのものよりも例の衣装のインパクトのほうが強かった。学校でカーテンを外してこれをマネするやつがいたのを記憶しています。
しかし大人になってから聴くと、こりゃあとんでもなくカラオケ難易度が高い曲ですね。音符の数が半端じゃなく多いしそのなかでの音程の上下がほんと難しい。その意味ですごく忙しいこの曲を優雅な雰囲気で歌っちゃうジュディ・オングもさすが。
そういえば今は認知症で寝たきりの私の母がこの曲を(当時家にあった8トラかカセットテープの)カラオケで歌っていたような。ただでさえヘタだったのでこの曲を歌ってもまったくサマになってなかったけど、このころのヒット曲はそういう幼いころの家庭の団欒が思い出されて、あのころはよかったなあ・・という気にさせられます。
亡父が好んで聴いていた「また逢う日まで」
阿久悠作詞、筒美京平作曲・編曲の、尾崎紀世彦「また逢う日まで」(1971年)は私の亡父が好きで聴いていた曲で、おかげで私もフルでソラで歌えるくらい覚えました。
私が生まれてちょっとのときに出た曲ですからリアルタイムでは知りませんが、これはもう100万枚オーバーのセールスを記録したのも当然すぎるといえる超名曲。
オフィシャルな動画はないみたいなのでこれを貼りましたが大丈夫かな。
パっと見はモミアゲのインパクトが絶大。しかし歌い始めるとそんなことよりもその歌唱の凄さにブッ飛ばされます。尾崎はこのときまだ30歳手前のはずですが、その容姿以上に歌声の貫禄はもう圧倒的。これと比べちゃうと、いまの歌謡界の同じくらいの年齢の若手歌手の歌唱は残念ながら相当に見劣りしてしまう。これくらい凄い歌唱を聴かせる人が出てこないかなあ!
私の亡父は亡くなる直前にはこの曲をなぜか突然聴きまくるようになっていて、そのときすでにこの世との別れを予感していたのかなあ・・などと考えると複雑な心境になります。
太田裕美の初期作はすべてが名作・名盤!
しかし個人的に「筒美京平作品」と言われれば、最も大好きなのは太田裕美が歌ったもの。
なかでも初期の3作は絶対に聴いておくべきです。これほどの作品をわずか1年くらいのあいだに次々とつくっちゃったんだから、どんだけ凄かったんだ・・と驚嘆するしかないです。
この3枚と、加えて(筒美氏の曲は1曲だけだが)「12ページの詩集」は私にとってまさに「棺桶に入れてほしい」必殺アルバム。
初期作品では大部分の楽曲が筒美作品で、その素晴らしさはもう悶絶レベル。太田裕美の歌唱があまりに個性的で可憐で魅力的、っていうのもあるけど、イッパツで覚えられるキャッチーさがあるのに胸に響く哀愁があふれている楽曲はとにかくステキ。
筒美氏自身が「心にしみる曲をつくろうと思ったことはない。ヒットする曲にすることを意識している」とどこかで語っていたのを読んだことがありますが、いやいやウソつけ!って感じ。もう胸が締め付けられまくりのエモーショナルな曲が満載。売れる曲を書いたらそれがすなわち心にしみる曲に自然になっちゃったというのは、昭和という時代がそうさせたのかそれとも筒美氏がまさに天才だったからなのか。おそらく後者なんでしょうね。
↑これもオフィシャルではないようだけどあまりに素晴らしいので貼っちゃいます。「まごころ」のA面トップを飾る「雨だれ」はまさに名曲!
このへんの作品はもう国宝級だと思っているのでいつかきちんと記事にするつもりでしたが・・・あまりに急な訃報にふれ、とりいそぎ紹介しなければと思った次第。老若男女問わず、未聴の方はとにかく聴いていただきたい。
太田裕美自身も乳がんで闘病中という話で、回復をこころよりお祈りいたしております。
この記事をつくるために筒美作品をいろいろ聴きなおして、その仕事の偉大さにあらためて驚嘆。ジャニーズタレントの曲も、筒美氏が書いたものは今のジャニーズの曲みたいに薄っぺらじゃなかったんだなあ、とか、いろいろ考えさせられました。「仮面舞踏会」なんてめちゃめちゃカッコいい。
今後テレビなどでは追悼企画があるでしょうから、それにあわせてまた記事にしたいと思います。