言わずと知れた世界的ヘヴィ・メタルバンド、IRON MAIDENの初期のヴォーカリスト、ポール・ディアノがさる10月21日に亡くなった、というニュースをみました。享年66歳。心よりお悔やみ申し上げます。
→amass 元アイアン・メイデンのシンガー、ポール・ディアノ死去
これはものすごくびっくりしたし、ひたすら残念。長いこと体調が悪いということは聞いてはいたものの、先日「PAUL DI'ANNO'S WARHORSE」なるあたらしいバンドでアルバムを出したばっかりだったじゃないか。不調を抱えつつも元気に活動しているんだと思っていたのに。
↑しかもそのニューアルバムが素晴らしいデキ。まだまだこれから、ってときに。
それに、何度も書いたようにIRON MAIDENは私をヘヴィ・メタルの世界に引きずり込んでくれた重要バンドのひとつ。そしてポールのヴォーカルが聴ける初期の2枚のアルバム「IRON MAIDEN」「KILLERS」は私にとっては「棺桶に入れてほしい」っていうくらいの作品であり、その歌声を中学生のころから聴きまくり、シビレさせられた。
→思い出の名盤:IRON MAIDEN「IRON MAIDEN」
彼の後任としてIRON MAIDENに加入したブルース・ディッキンソンは、格調高いオペラティックな歌唱が持ち味ですが、比較するとポールはよりアグレッシヴでダーティ、アウトローっぽくパンキッシュな歌唱が特徴ですね。しかしその吐き捨てのなかに、哀愁を帯びたしっとりと湿った歌声が混ざってくるところがほんとに魅力的だった。彼が歌ったMAIDENの曲のなかで、その魅力が最も発揮されてた曲はコレじゃないですかね。この曲はブルース・ディッキンソンではなくポールで聴きたい。
この素晴らしい歌声をのこしてポールがお亡くなりに。私は彼のカタログのすべてをチェックできているわけではありませんが、聴いた中で好きだったものを紹介して追悼記事としたい。
IRON MAIDEN脱退後の作品で好きなのはコレ!
ポール・ディアノは1981年にIRON MAIDENを解雇され、その後DI'ANNOやBATTLEZONE、KILLERS、その他さまざまなバンドで活動。前述のWARHORSEが最後となってしまいました。
正直言うと私はそれらの作品はあまり好きでないもののほうが多い。DI’ANNOは曲は良かったけど猛烈にポップでメタル色ゼロだったし、BATTLEZONEは曲がつまらないものばかりだった。
そんななか私が好きだったのは、「KILLERS」名義で発表された1992年のアルバム「MURDER ONE」。
これは疑いもなく「ヘヴィ・メタル」なサウンドと楽曲が詰まっていた素晴らしいアルバム。といってもMAIDEN風ではなく、どちらかというとJUDAS PRIEST味を感じさせる。まさにブリティッシュ・ヘヴィメタル・・という湿り気と強靭さと、どこまでもキャッチーな歌メロ。こんないい作品がなぜあんまり評価されなかったのか。1992年という、メタルの斜陽化が始まったころだったのが不幸だったのか。
おお~カッコいい。最初からこれをやりゃあ良かったのに・・・としか言いようがない。若々しく弾けるようなエネルギーを撒き散らして突っ走る。そこへのっかる荒々しい迫力満点のポールのヴォーカル。これこれ、これが聴きたかったんだよ!・・・と快哉を叫んだアルバムでした。
T-REXのカバー「Children Of The Evolution」もメタルとして消化されている感じだし、とくに新鮮なアレンジというわけでもないが記事冒頭で言及した「Remember Tomorrow」も収録されていて、MAIDEN時代と遜色ない歌声を聴かせてくれている。
ポールの訃報にふれ、MAIDEN以外の音源もチェックしてみよう・・と思っている方には、まずはなにはなくともこのアルバムだけは聴いておくことをお勧めしておきたい。
ちなみにKILLERS名義では1994年に「MENACE TO SOCIETY」なるアルバムも出ていますが、これがまるっきり(グルーヴなんちゃらになったあとの)PANTERAそのもので、そのタイプが嫌いな私にはとても受け入れられるものじゃなかったので、「そういうのが好きで、ポールの作品ならなんでも聴きたい」のなら買ってみてもいいかも、とだけ言っておきましょう。
久しぶりにポール・ディアノののこした作品を聴き、憧れたミュージシャンがこの世を去った悲しみをかみしめた次第です。私ももう50すぎて、中高生のころに憧れた人たちの訃報にふれることが多くなり、人間はいつどうなるかわからない、だからなにごとも一生懸命やらなきゃならないんだ・・・とあらためて痛感。ポールも車椅子に乗り不調と闘いながら最後まで頑張ったわけですからね、そういうところを見習っていきたい。