今回は真性デスメタルバンドの作品のレビューを。
興味のない方はスルーしてください。
アメリカ・フロリダ州出身の超冒涜的デスメタルバンド、DEICIDEが
9月にリリースした12枚目のアルバム、
「OVERTURES OF BLASPHEMY」。
SLAYERの直系子孫的なサウンドが大好きだった
DEICIDEは1990年にデビューアルバム「DEICIDE」を発表し、
日本国内でもリリースされました。
これとこの次のアルバム「LEGION」は、
SLAYERの影響をモロに感じさせるリフとスケール無視のギターソロ、
当時としては圧倒的スピードのブラスト・ビート、
そこへグレン・ベントンの低音での呻りと高音でのスクリームを織り交ぜたデスボイスが絡むという独特のサウンドで、
私はもう大好きでした。
当時としては最もエクストリームなサウンドのひとつでしたね。「究極のデスメタル」という宣伝文句にも偽りなし・・・と思えました。
(いつか思い出の名盤として紹介したいと思っています)。
中心人物であるドラムスのスティーヴ・アシェイムは私と同じ年齢ということもあり、
その動向には注目していたのですが、
5枚目くらいから以降はちょっとイマイチな作品ばかりで、
私も新作が出たからって急いで買うようなことはなくなってきていました。
今回はYOU TUBEでたまたま聴いたリード・トラックを聴いて、
「オっ、なかなかカッコいいじゃないか・・・!」
と思ったので買ってみた次第。
ギターはメロディアスでカッコいいけれど、ヴォーカル・ラインが印象的な曲がなく残念
amazon.co.jp Overtures Of Blasphemy
あいかわらずのグロテスクなアルバム・ジャケット。見る人が見たらこれも相当に冒涜的なんでしょうが、
キリスト教徒ではない私にはちょっとわかんないです。
歌詞も、1曲目からいきなり「キリストの血を焼く」とか、いつもどおりキリストを憎みまくり。
で、肝心のサウンドはどうなのかというと、
直球の現代的デスメタル。
ギタリストの片方が交代したせいなのか、
リフもギターソロも若干のキャッチーさを感じますね。
DEATHやOBITUARYに在籍していたころのジェイムズ・マーフィー
(DJの同じ名前の人とは同名異人)みたいな、流麗でいて愁いを帯びたカッコいいソロを
ちょこちょこと聴かせてくれてます。
まあ、メロディアス、というのとはちょっと違うけれど、
わりとわかりやすいリフと曲展開。
演奏は文句なしの安定感、100%まじりっけなしのデスメタルで、
かなりハイクオリティであることは間違いない・・・
のですが、個人的にはちょっと気に入らないところも。
それは、先に貼った「Dead by Dawn」における、「dead by dawn! dead by dawn!!」と
連呼するところみたいな、
印象的なサビをもつ曲がほぼ皆無であること。
初期の代表曲は、どれも印象的なサビをもつ曲が多かったのに、
今作も含め近作はそういうのが全然ないんですよね。
そのぶんスピードとアグレッションが増しているわけで、
それを進化ととらえる向きもあるかもしれませんが、
私はデスメタルといえども
うたえる、叫べるサビというのが欲しいと思うのです。
CANNIBAL CORPSEのように、
轟音とグロウルの洪水に身を任せているだけで快感、歌メロなどどうでもいい、
という域に達しているバンドもいますが、彼らはそういうバンドではないと私は考えています。
グレン・ベントンのヴォーカルは低音でのグロウルのみになっていて、
ほとんどひたすらに呻っているだけで
な~んか一本調子なんですよね。
初期の楽曲のように高音をうまく使って
ヴォーカルラインを際立たせるような曲がほしかったな、と。
まあしかし、デスメタルとしてカッコいいのは間違いない。
50歳とかにもなってこれだけエクストリームなサウンドを
追究することをいまだに続けていることには敬意を表したい。
できうれば、グレンの高音スクリームの復活と、
ふたりのギタリストがもっと自由にメロディアスなソロを弾きまくる曲をお願いしたい。
オッサンでもこれだけブルータルなメタルがヤレる・・・のであれば、
私もいろんな意味でもっともっとがんばらなくては!
という気にさせられました。