先日の記事で、MUSIC FOR NATIONSが1986年に出したコンピレーション・アルバム「SPEED KILLS 2 ~THE MAYHEM CONTINUES・・」について書いたので、
→思い出の名盤:スラッシュ・メタルの深遠さを垣間見た名作コンピレーション「SPEED KILLS Ⅱ~THE MAYHEM CONTINUES・・~」
そこに参加していたバンドのことを書こうかと。
すると私としては、まずはBATHORYについて書かなくてはなりません。
一部マニアには伝説扱いされながらも、けっして正当な評価をされてない、偉大な存在です。
現代のいわゆるブラック・メタルの始祖的な存在
BATHORYはスウェーデンのデス/ブラック・メタルバンド。
1980年代から、2004年に中心人物(というより、実質的には彼のひとりプロジェクト)のQuorthonが亡くなるまで活動しました。
そのサウンドは現代のいわゆる「ブラック・メタル」に絶大な影響を与え、その手の音楽のオリジネーターのひとつ。
といっても、その音楽性は約20年の活動のなかでけっこう変化しています。
初期のころはまるっきりVENOMというサウンドで、4作目からは現代でいうところの「ヴァイキング・メタル」みたいなことをやってみたりと、時期によって作風はかなり違います。
VENOMは1981年にデビューした、これまた現代のデス/ブラック・メタルに大きな影響を残したバンドで、80年代のエクストリームなメタルバンドで彼らの影響下になかったバンドは皆無かも・・・ていうくらいなのですが、その整合性のないひたすらやかましく下品なサウンドは個人的にはあまり好きじゃないのでそのへんは省略。私はVENOMよりもVENOMに影響されたバンドたちに興味がありました。
で、BATHORYが「VENOM大好きです!」というスタイルで出したのが1984年の1stアルバム「BATHORY」と、1985年の2ndアルバム「THE RETURN......」でした。
1stはほとんど完璧にVENOMのマネ。なかなかクールな曲もあるし、その邪悪さはVENOMを上回ってるけれど、メタルというよりはノイズと紙一重のロックン・ロールという感じもしなくもない。
1stではVENOMマニアの少年がお父さんと一緒に(プロデュースは彼の父親)VENOMっぽいメタルをやってみました・・・みたいな感じがまだ抜けてなかったのですが・・・
2ndは「魔界」を覗いてみたらこれが流れていた!・・というサウンドに!
2nd「THE RETURN......」では同じ路線を踏襲しつつもその邪悪さとノイジーさ加減が段違いに。
気が滅入りそうな超ダークで長~いイントロ。なにかが迫ってくるようなズ~ンという音だけ。
さんざん焦らされ、来るぞ来るぞ~と思ったころに、爆発的な負のエネルギーを発散しながら「Total Destruction」が突っ走ります。
サウンドプロダクションは最悪で、ギターなんか何やってるのかよくわからないものの、それが邪悪さをより際立たせている。
ドラムス(このアルバムではサポートメンバーが演奏)も曲によっては走ったりモタったりするけれど、そういうマトモさをブラック・メタルにもとめてはいけない。
まあ現代にこの作品が出てきていたら「ひでえ」と思ったかもしれません。しかしこれが出たのが1985年。演奏のクオリティでいえばもっと凄いバンドがたくさん出てきていたけれども、これほどの邪悪さを体現していたバンドはいなかった。
POSSESSEDの邪悪さとは次元がちょっと違う。POSSESSEDの場合はギタリストが技巧派だったのでなんだかんだいってもけっこう「マトモ」に聴こえた。
→思い出の名盤:デスメタルの源流・・POSSESSED「SEVEN CHURCHES」
しかしBATHORYの場合はもう「こいつはマトモじゃない」としか思えませんでした。形容するなら、地獄もしくは魔界へ通じる扉を開いてみたら、その向こうから聴こえてきたのはこのサウンドだった・・・
という感じ。
最高。「マトモ」な人はコレを聴いて「カッコいい・・・」と感じる神経が理解できないでしょうが、「マトモ」だとこのクールさがわからない・・のなら、そんな「マトモ」さなんぞクソくらえ。
いくら小賢しいテクニックやコンセプトだのを振り回してもこのカッコよさは体現できない。現代の、演奏はやたらに上手いブラック・メタルを聴いていても、このBATHORYのクールさにかなうものはほとんどないんだなあ。
そして、次作でBATHORYのブラック・メタルが完成する
1stはまるっきりVENOM、2ndはそこへ現代のブラック・メタルに通じる圧倒的邪悪さとアグレッションをプラス。
そして次作、1987年発表の3rdアルバム「UNDER THE SIGN OF THE BLACK MARK」で、BATHORYのブラックメタルは完成されます。
ていうか、「UNDER THE SIGN OF THE BLACK MARK」が現代のブラック・メタルの姿を決定づけた。現代で「ブラック・メタル」を標榜しているバンドはほぼすべてがコレのマネをしてるだけ・・・というまさに名作中の名作で、BATHORYの最高傑作は間違いなくそれ。
長くなっちゃうのでまた別の記事で、「UNDER THE SIGN OF THE BLACK MARK」について書きます!
→思い出の名盤:ブラック・メタルの聖典! BATHORY「UNDER THE SIGN OF THE BLACK MARK」