スウェーデンの伝説的ブラック・メタルバンド、
BATHORYの名作のついて、これまで2作品を記事にしました。
→思い出の名盤:魔界への扉をひらく!BATHORY「THE RETURN......」
→思い出の名盤:ブラック・メタルの聖典! BATHORY「UNDER THE SIGN OF THE BLACK MARK」
今回はその続き。
BATHORYの4枚目のアルバム、
1988年の「BLOOD FIRE DEATH」。
美しい、でも恐いジャケ絵に期待感が膨らんだ
1987年の3作目の「UNDER THE SIGN OF THE BLACK MARK」で、
現代のいわゆるブラック・メタルのバンドが猫も杓子もマネをしている
サウンドスタイルを独自に完成させたBATHORY。
私はそのスピードと邪悪さにすっかりシビれ、
すっかりBATHORY信者になっていました。
なので、1988年に新宿の輸入盤店で「BLOOD FIRE DEATH」をみつけたときには
「オっ、BATHORYの新譜!」ということで迷わず買いました。
前作までのサタニックなイメージとはだいぶ違うアルバム・ジャケット。
この絵は19世紀のノルウェーの画家、
ピーター・ニコライ・アルボによる
「ASGANRDSTEIEN」(←ライナーにはこのように表記されていた。正しくは「ASGARDSREIEN」?英語では「THE WILDHUNT OF ODIN」)という作品らしい。
彼は北欧神話の世界を描く画家だったそうで、
これも北欧神話・伝承に基づいた絵らしいですが、恐ろしくも美しい世界観がBATHORYのさらなる進化を期待させました。
私が所有するアナログ盤はダブル・ジャケットで、
ジャケットをひらくとそこには中心人物であるQuorthon(ギター&ヴォーカル)と、
この作品に参加した(このときはいちおう正式メンバーだったのかな?不明)
ドラムスのVvornthとベースのKothaarが(この名前はどう発音するんだろう)
戦士のような(でも裸)カッコウで写ってる。
このカッコウをみると、
「あ、ジャケ絵はキレイになったけどやっぱり中身はサタニック・メタルなのかな?」
という気にもさせられたものの、
それはそれで楽しみ・・・という気持ちでレコードをターン・テーブルに載せました。
荘厳なイントロに続き、あの名曲が炸裂
このアルバムもBATHORY作品の例にもれず長いSEのイントロから入ります。
「Odens Ride Over Nordland」。
ジャケ絵の世界がみごとに表現されていますね。
恐ろしいなにかが襲来してくることを予感させます。
その恐怖、緊張感を保ちつつ、壮大な叙事詩のような「A Fine Day To Die」になだれ込みます。
これには驚いた。
私は「UNDER THE SIGN OF THE BLACK MARK」の延長線上にある作品を期待していましたから、
ミドルテンポのこの曲を聴いて、
一瞬、あれえ~?という感じになりました。
しかし・・これがカッコいい。
キャッチーなリフとヴォーカルライン、ドラマティックかつ荘厳な雰囲気。
「DIE !!!」というQuorthonの叫びにはそこはかとなく哀愁が漂い、
聴きながら思わず「DIE !!!!」と叫んでしまう。
これがまさしく、いまでいうところの「ヴァイキング・メタル」の誕生そのものだったのではないでしょうか。
当時は「ヴァイキング・メタル」なんていう概念は存在しませんでしたから、
「劇的なスラッシュ・メタル」という認識をもちましたが、
これものちに多くのバンドがマネをすることになりました。
速い曲もちゃんと用意されていた
で、このアルバムの素晴らしいのは、
荘厳なヴァイキング・メタル曲と
スラッシュ・メタル然としたアグレッシヴな曲が
バランスよく共存していた点。
1990年の5th「HAMMERHEART」、さらに1991年の6th「TWILIGHT OF THE GODS」では
ヴァイキング・メタル路線がさらに推し進められ、
Quorthonもノーマル・ヴォイスで歌ったりして、
あれえ・・・速い曲ないの?とちょっと不満だったのですが、
「BLOOD FIRE DEATH」はそのあたりも抜かりがない。
劇的な「A Fine Day To Die」の次には
前作までのBATHORYらしいスピード&アグレッションが炸裂。
演奏の安定感はまだまだイマイチ。しかしそんなことは些末な問題。
現代のめちゃめちゃ上手いバンドがカバーすれば(VADERあたりがやってくれないかな)もっと速くもっと過激にできるんだろうけど、
これはQuorthonがやってたからこそ震えるほどの凄味を発揮していたのであって、
どれだけ演奏が上手かろうがそれを超えることはできないんだなあ。
・・・というわけで、
「BLOOD FIRE DEATH」はエクストリームなメタルを好きなのならば
死ぬまでに絶対に聴いておかなければならない名盤。
しかし、前述のようにこのあとの2枚のアルバムはさらにヴァイキング・メタル色が濃くなり、
個人的にはイマイチなデキになっていきます。
その後は闇雲に突っ走る古臭いスラッシュ・メタルになったり、
またヴァイキング路線に戻ってみたり・・・と、
(私に言わせれば)音楽的に迷走。
12枚のアルバムを残して、Quorthonの早すぎる死(38歳)とともにBATHORYは終わってしまいます。
後期の作品はイマイチなものも多かったけれど、
現代のいわゆる「ブラック・メタル」「ヴァイキング・メタル」を創始したという点で
あまりにも偉大な存在でした。
そんなBATHORYのアルバムがこれまでに一度も日本盤が出てないというのは、
不思議と言うべきかというか何考えてんだと言うべきか・・・とにかく残念。
せめて初期4作品はどっかのレーベルが国内盤を出してくれないかなあ。