前にも書いたかもしれませんが、たまにブログのアクセス解析を使って、どんな検索ワードでここへ見に来てくれる人が多いのかをチェックしてみると、「○○(バンド名) 最高傑作」というワードが多いみたいなんです。
もっとページビューがほしい、などと考えるとやってて面白くない(上には上がいくらでもいるので上を見ても仕方がない)し、日和った記事は書きたくないんですよね。だからページビューなどは一切気にせず書きたいことだけを書こう・・・と思っているんですが、そのバンドを知らないファンなどが「このバンド聴いてみようと思うだけど、まずどれから聴くのがいいの?」という問いの答えを求めるのは自然なことであり、そういうニーズがあるんならばもっとそういう記事を書かなくてはならないなあ、と。
これまでも「~~の最高傑作は・・」という記事は書いてきましたがここのところず~っとサボっていたので反省しているところ。今後は心を入れ替えてどんどん書いていくつもり
そういうわけで今回は、アメリカの「ベイエリア・スラッシュ」の大御所、TESTAMENTの最高傑作は・・・という話。
これに異論のある人は少ないでしょ!
TESTAMENTは1983年に結成。メンバーの大病や交代や一時の解散などいろいろ大変なことがありつつもいまだ第一線で活躍しており、これまでに12枚のアルバムを発表していますね。
その長い歴史のなかにおいては、時代に合わせて若干音楽性が変化したりしたこともありましたが、アグレッシヴなメタルであること自体は常に変わることはなく、私ももちろん好きなバンド。
その最高傑作はなにか・・・。う~ん、「速い」「アグレッシヴ」という意味では、デイヴ・ロンバードやスティーヴ・ディジョルジオらのバカテクの持ち主たちが参加した「THE GATHERING」が捨てがたいが、せっかくジェイムズ・マーフィーという名人もいたのにギターソロが少ないのが不満だったし、するとやっぱりコレになる。
1987年発表のデビュー・アルバム「THE LEGACY」。
記事タイトルには「誰が何と言おうと・・」と書きましたが、これにはコアなTESTAMENTのファンの多くが賛同してくれるのではないかと。
このアルバムが出たころ私は高校生。
スラッシュ・メタルに傾倒し、アルバイトで得たカネを握りしめて西新宿やお茶の水まで電車に乗って出向き、輸入盤店や中古盤店でそれ系のレコードを漁るのが月イチの楽しみでした。
でもおカネはそんなに持ってなかったから(当時やっていたバイトの時給はたしか570円とかそれくらい。でもレコードの価格はいまのCDとほとんど変わらないくらいだった)、もらったバイトの給料でどのレコードを買うか、というのは非常に重要かつ悩ましい問題でありました(だから、クソみたいなものでも広告主のためにテキトーに褒める雑誌のレビューは許せない→音楽誌のディスク・レビューはただの新譜カタログ)。
そんなふうに、今回はなにを買おうかなあ・・と考えつつ西新宿のいつもの輸入盤店に行ったとき、大音量で流れていたのがTESTAMENTのデビュー作「THE LEGACY」アルバムでした。
TESTAMENTっていうMETALLICAみたいな凄いバンドがいる・・という話はきいていましたが・・・これ聴いた時はもう腰が抜けた。なにこれスゲー。
入荷したばかりの最新盤、みたいな時期でしたから、そのクオリティの高さにビックリしたのは私のみならずそのとき店内にいたほかの客も同じだったようで、女性客が「これ誰?」という声をあげ、(今かかっているアルバムはレジのところにディスプレイされていたのでそれを見て)「TESTAMENT? すんごいねこれ!」と言っているのを見たのを今でも覚えています。
当時の私はレコード1枚買うのにも熟考の上に熟考を重ねていましたが、これはもう迷わず買いました。家に帰ってレコードをプレイすると・・・これが全編素晴らしかった。
攻撃性と叙情性を兼ね備えた、スラッシュ・メタルの傑作
当時のスラッシュ・バンドの多くはアルバム冒頭に静かなイントロやSEを入れることが多かったですが、このアルバムは直球で始まる。しかもその冒頭フレーズからしてキャッチーでカッコいい。そしてなだれ込むようにズドズドズド・・というスラッシュ・ビートが始まり、そこへのる高速でザックザク刻まれるリフのキモチよさに、全力でヘドバンせざるをえなくなっちゃう。
ザクザクかつキャッチーなリフ、チャック・ビリーの狂気をはらんだ絶叫、野太く汗臭いコーラス、そして押しまくる中に絶妙に配置されるメロディアスなギターソロ。
このアルバムのギターソロはどれも素晴らしい。いつも言うけどつまんないバンドに共通して足りないのは、こういう「聴かせどころ」を意識して配置するということだと思うんですよね。このアルバムはそこがもう完璧。
そして(音が良くないのも影響してか)徹頭徹尾速くてウルサいメタルなのに、アルバム全体が神秘的な、ジメッとした湿り気を含んで、なんとも形容しがたい魅力を発散しているのも最高。「Burnt Offerings」「Do Or Die」なんかを聴くとそれが顕著に感じられます。
個人的に最も好きなのは、最後の2曲。メロディアスな「Alone In The Dark」から、このアルバムのクライマックス(と私は思っている)のドラマティックなスピード曲「Apocalyptic City」への流れ。そこまで聴き終わると(当時はカセットテープに入れて聴いていたので、B面の残りを早送りして)トップの「Over The Wall」に戻ってまた聴いちゃう。するとエンドレスでず~っと聴くことになっちゃう。
そのようにしてテープがビロビロになるまで聴き、ビロビロになっちゃったらまた別のテープに録音していました。その後CDを手に入れましたが、いまに至っても折に触れて手を伸ばす名盤。
その後の作品も逐一チェック(最新作「TITANS OF CREATION」はまだ)していて、どれもこれも決して悪くはないものばかり(「THE RITUAL」はあまり好きじゃないかな)でしたが・・・どう考えても「THE LEGACY」は別格の素晴らしさ。「最高傑作はどれ?」と訊かれたら答えはやっぱりこのアルバムになるし、私の「棺桶アルバム」のひとつでもあります。
キモチよく首を振れる爽快さと、心をえぐられる哀愁のメロディの洪水。80年代スラッシュ・メタルの大傑作。のちに再録音したアルバム(「 FIRST STRIKE STILL DEADLY」) なんかも出しましたが、いやいやいや、この曲順とサウンドプロダクションと若さ溢れる勢いがいいんですよ。未調の方にはぜひともまずはオリジナルのほうの「THE LEGACY」を聴くことをおススメしておきます!