安倍元首相を銃撃したとされる山上容疑者、ようやく「鑑定留置」を終えて起訴されるようです。
いやいやいや、もう逮捕から半年以上。まだ起訴もされてなかったのかよ、と驚かれた方も多いんじゃないでしょうか。
捜査機関側の表向きの言い分は「刑事責任能力が争点になると面倒くさいから前もって精神鑑定した」っていうことになるんでしょうが、彼が正気であることは誰がどうみても疑いようがないんじゃないですかね。はたして弁護側がそんな主張をするだろうか。
これはやっぱり、なにか捜査機関側の都合で鑑定留置をわざと長引かせた、って考えるべきなんでしょう。捜査機関っていうか国家権力としては、山上が狂人であり、「安倍元首相が旧統一教会とズブズブだった」という「事実と反した思い込み」によって犯行に及んだ、ということにしたいってことなのかな。
正気の山上が旧統一教会によって被害を受けたその報復として安倍元首相の殺害を計画した、ってのを立証しようとするなら、ほんとうに安倍元首相が旧統一教会と関係していたのか、っていうのが量刑を判断するうえで争点になるでしょう。すると安倍がやっていたことを解明しなきゃならなくなるから、山上が狂ってるということにして、そのへんをなあなあで済まそうとしてるってことなんだろうか。必要もない鑑定留置を延々とやったのも、国民の関心が旧統一教会から離れるのを待っていたってことなのか。もしくは「争点は山上の刑事責任能力であり、安倍元首相や統一教会は関係ない」ということにしたいのか。
いずれにしろ半年近くもの鑑定留置は容疑者にとって不利益でしかないし、これが許されるなら、難しい事件で捜査機関が「勾留が20日間では足らない、もっと時間がほしい」と思ったら「こいつ狂ってるかもしれないから鑑定留置お願いしま~す」って言えばいくらでも引き延ばすことができるのでは。それを防止するために裁判所が判断をするはずなのに、言われたらホイホイ認めちゃうんだなあ。
起訴される前の段階からこんな差別的扱いを受けて、公正な裁判を受けられるのか心配になる。「元総理を殺して社会的影響が大きいから無期懲役になるかも」とか弁護士が言ってるのをみましたが、そんな判決が出たらそれこそ差別的、憲法違反じゃないか。元総理だろうがホームレスだろうが同じ人命だろ。だから尊属殺重罰規定は違憲ってことになったんだろ。2007年の長崎市長射殺事件の無期判決は犯人が暴力団関係者だったからああなった(それもヒドイ話)んだとしても、山上は前科もなく私利のためにやったわけでもなく動機には汲むべき情状もあるわけで、殺されたのが元総理だったからって異常に重い判決になったらまさにそれは法治国家の否定。まあ裁判員裁判などというめちゃくちゃな制度を採用してる時点で法治国家は終わってるんだけど。山上も裁判員裁判になるのかあ。まともな裁判にはなりそうもないなあ。ほんと日本の司法は終わってる。カルロス・ゴーンが逃げた気持ちもわかる。
岸田は「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く」などとぬかして「山上の事件は民主主義への挑戦!安倍は悪くない!」っていうふうにもっていきたいらしいけど、山上に民主主義を攻撃するなんて意図はなかったのは明らかだし、民主主義をぶっ壊してるのは自民党でありそれを代表してたのが公文書を書き換えたり国会でウソついたりした安倍元首相。こいつらのタワゴトに騙されて「民主主義の根幹を揺るがした罪は重い!極刑を!無期懲役を!」なんていう国民が増えたりしないことを祈りたい。裁判所は政治に左右されずに粛々と法に従って妥当な判決を出してほしい。
加山雄三「湘南に愛をこめて」
先日ライヴ活動からの引退を表明した「永遠の若大将」加山雄三が、1990年に30周年記念として発表したアルバム。
私が若大将の歌が好きであることは何度か書きましたが、そのカタログはあまりに膨大ですべてをチェックするのは困難。CD化されてないものも多いですしね。このアルバムもたまたま手に入って初めて聴きました。
楽曲はすべてが若大将自身の作曲によるもの。非常にバラエティに富んだ構成でありながら、聴き通すとそのあいだ雄大な海に抱かれていたような感覚に陥る包容力にみちたアルバム!やっぱ若大将は天才・・と平伏すのみ。
しかもどの曲も圧倒的に「らしさ」にあふれているんだなあ。2曲目の「指輪の意味」なんかは「蒼い星くず」みたいな歌メロで、鼻歌みたいな独特の歌唱がものすごく心地いい。どんな曲を書いても「らしさ」がにじみ出ちゃうっていう点で、吉幾三と並んで日本で最も偉大なコンポーザーのひとりであることは間違いないでしょう。キャッチーかつ情熱的な「熱風」がいちばん気に入りました!さすがだ。
おススメ度・・・★★★★
TYRANEX「DEATH ROLL」
スウェーデンのスラッシュ/スピード・メタルバンド、TYRANEXの3作目。2017年。
このバンドは以前2ndを記事にしました。→今週聴いたもの:2021年4月8日~4月14日
スピードとアグレッションを増大したENFORCER、みたいな真っ正直なピュア・メタルサウンドは素晴らしくて、ほかの作品を聴きたいと思っていたバンド。
このアルバムでも変わることなく、ひたすら突進するなかに聴かせるメロディを適度にちりばめたスピード・メタルを展開してくれてました! 緩急を心得た曲展開によって、そのスピードとアグレッションに「カッコいい!」と思わずため息が漏れる魅力的なメタルをやってくれてる!オールドスクールな高速スラッシュ・リフの洪水は文句なしにクール!
5曲目みたいなIRON MAIDEN風のハモリを聴かせてくれる曲がもっといっぱいあればなお良かったかな。PAVLOV'S DOGのデヴィッド・サーカンプがスラッシュを歌ってるような特異なヴォーカルの声は好き嫌いが分かれるでしょうが、個人的にはめちゃめちゃ好き。メタル誌とかはこういうバンドをもっと取り上げろよ(読んでないから知らないけど、本屋でみるといつも表紙はロートルばっかりですよね)。4作目はまだか!
おススメ度・・・★★★★
ENIAC REQUIEM「SPACE ETERNAL VOID」
USのプログレッシヴ・メタルバンド、ENIAC REQUIEMの1st。1998年。
ギタリストは過去のバンドでマイク・ヴァーニーのシュラプネル・レコーズから音源を出したりしていたらしく、二人とも壮絶な速弾きを聴かせてくれます。それに負けじとキーボードも流麗でテクニカルなプレイで対抗する。リズム隊も相当なテクニシャン。
で、ヴォーカルはギタリストの片方の人が兼任してるようなんですけど、このヴォーカルがなぜかちょっとヘナチョコ。ヒドイというわけではないけどギターとかがスゴイからなんか際立っちゃう。これでヴォーカルも強烈だったらスゲー!ってなるところだったのに。まあイングヴェイ・マルムスティーンだって歌はヘナチョコだから、ギターも凄い、ヴォーカルもカッコいいっていうデイヴ・メニケッティみたいな人はそうそういないってことなんでしょう。
ヴォーカルがたいしたことないのも手伝ってか、歌メロもなんかイマイチなものが多いかな。テクニック自慢のプログレメタル、っていう感じで、ギター小僧にはたまらない作品かもしれませんが、私は1回聴いたらもういいや、ってなりました。
おススメ度・・・★★★☆