この過疎ブログにおいても、スラッシュ・メタルの名盤の話を書いた記事はけっこうよく読んでいただけています。
つまり需要があるということだと思うので、もっとどんどん書いていこうと。これについて書きたい・・と思う名盤は山ほどありますから何を取り上げるかは迷うところ。
そんななか、あるきっかけでこの名盤を聴きなおしたので、今回はこれについて書いておきましょう。
ARTILLERYの傑作アルバム「BY INHERITANCE」。
北欧スラッシュ・メタルの先駆者
ARTILLERYは、80年代前半から(二度の解散・再結成あり)活動するデンマーク出身のスラッシュ・メタルバンド。北欧のエクストリーム・メタルの先駆者のひとつ。
デンマークのメタルというと私が真っ先に思い出すのはやはりMERCYFUL FATE。PRETTY MAIDSもデンマークか。そしてその次に浮かぶのがこのARTILLERYですね。
そのARTILLERYは現在までに9枚のアルバムを発表。
2018年に出た9th「THE FACE OF FEAR」は残念ながらつまらない作品でガッカリしたのですが、最初の解散をするまでの初期の3枚はすべてがスラッシュ・メタルの名盤といえるデキでした。
個人的な趣味でいうとそのなかでいちばん好きなのは2ndの「TERROR SQUAD」なのですが、あくまでも客観的に、最も高品質なメタルアルバムは・・というふうに考えると、彼らの最高傑作はやっぱり3rdの「BY INHERITANCE」だろうということになります。
ジャケットはB級メタル風味がプンプン匂いますね。しかし後述するように音は超一流。
これが出た1990年当時日本国内盤も発売されましたが、イランのホメイニ師を扱った「Khomaniac」がいろいろ問題ということでその曲だけカットされての発売でした。その「Khomaniac」がいちばんカッコいい超名曲なのに。
私は「Khomaniac」も入っている海外盤を当時手に入れたのですが、サラリーマン時代にメタル好きの後輩がいて、彼にあげちゃったのでつい最近まで手元になかったのです。
しかし先ごろ、偶然にレアなエディションのCDをみつけて、聴きなおしたので記事にしようと考えた次第。
そのエディションについては後述します。
オリジナリティを確立した3rdアルバム!
今後記事にしていこうと思っていますが、1stアルバムではひたすら陰鬱なスラッシュ・メタル、2ndでは高速リフで押して押して押しまくる、リフ主体の爆走スラッシュ・・といった感じだったARTILLERY。
しかしこの3rdアルバムで突然変異。はじめて聴いたときは、フレミング・ロンスドルフのあの声が聴こえてくるまで「これがARTILLERY?ウソだろ?」と思ったのをおぼえています。
イントロ「7:00 From Tashkent」で中東っぽいメロディが飛び出て、なにこれ・・・となり、続く「Khomaniac」ではあまりにカッコいいリフとキャッチーな歌メロの応酬に「なにこれぇぇl!」とノックアウトされることになります。
前作「TERROR SQUAD」では埃っぽく突っ走る激烈スラッシュだったのに、今作では流麗なツイン・リードのハモリと哀愁の歌メロを聴かせるメロディックなスラッシュになっちゃった。当時ガキだった私でも、こりゃあとんでもないアルバムだ・・・と腰を抜かしましたね。
スラッシュ・バラードとでも呼ぶべき雰囲気の「Bombfood」なんかを聴くと、もう前作までとはまったく違うバンドとしてとらえなくてはならない、と感じさせられます。こういうのを聴くと、ふだん触らないギターを引っぱり出してコピーしてみたくなります。このアルバムはそんな曲が満載。
すべての楽曲がドラマティックかつ哀愁をたたえ、しかもアグレッシヴ・・という完璧としかいいようがないアルバム。入手困難であることがほんとうに残念ですが、多少価格が高くてもチャンスがあれば手に入れておくべきでしょう。
ほんとうを言うと私はフレミングの声質がイマイチ好きではないのですが、とにかく歌メロが素晴らしいのでそんなことはどうでもよくなる。こういうの聴くと現代の凡百のエクストリーム・メタルバンドはゴミばっかり、という気になってきます。どいつもこいつもデス声で凄んでりゃあカッコいいと思ってる。
ともかく、スラッシュメタルを語る上においては欠くことのできない名盤。聴かずには死ねませんよ!
レアなエディションを手に入れたが・・
ここから先はオマケの話。
先述の、最近手に入れたレアなエディション。
METAL MIND PRODUCTIONSから2008年に出たリマスター再発盤をディスク・ユニオンが直輸入して販売したもの、らしい。2000枚限定盤。デジパック仕様。
Amazon.co.jp By Inheritance (24bt) (Dig)
こんなエディションが出ていることを私は知らなかった。
ボーナス・トラックが7曲入っていて、それがなかなか魅力的なラインナップだったのもありちょっと高かったけど購入。
ボーナス・トラックについて全部は書きませんけど、「Khomaniac」のデモ・バージョンが収録されているということで楽しみに聴いたんですよ。
で、聴いてみたら、「Khomaniac」とは似ても似つかない曲が入ってる。なにこれ・・・ジャケットには「with Flemming Ronsdorf」って書いてあるのに、ヴォーカルもどう聴いても別人。
ライナーノーツには「別の曲?と思えるヘヴィな曲」って書いてあるが・・・これはどう考えてもおかしいだろ。
・・・と思ってよく調べてみると、これは84年のデモ「DEEDS OF DARKNESS」に収録されている「Too Late to Regret」 という曲だ・・と判明。
この曲は2007年発表のBOXセット「THROUGH THE YEARS」にも入っているようですが私はそれもデモも聴いてなかった。YOU TUBEでみつけてようやくわかった次第。
なんだよ。解説の人も「別の曲?」なんて書いてるけどちゃんと調べろよ。これはMETAL MIND PRODUCTIONSのミスなんでしょうが、リリースする前に誰か気が付かないのか。私が入手したディスクだけがそうなってるなんてことはあるわけない。
というわけで残念な思いをした次第。海外レーベルのつくったものはよくよく気をつけないと危ない。でも、これは聴かなきゃわかりませんからね。仕方がない。中古で買ったしどこにも文句も言えない。
中古市場でこれをみつけたらご注意を。