スラッシュ・メタルの「帝王」、SLAYERの名作をふりかえる記事の続き。
私は高校に入ったころに2nd「HELL AWAITS」でSLAYERを知り、すぐに遡って1st「SHOW NO MERCY」を聴きますますSLAYERを信奉するようになりました。
→思い出の名盤:スラッシュ・メタルとの出会い・・「HELL AWAITS」/SLAYER
→SLAYERがファイナル・ツアーを終了。その名盤を聴きなおす~「SHOW NO MERCY」編~
今回は1986年の3rdアルバム、「REIGN IN BLOOD」。
メタル史に燦然と輝く名盤中の名盤であり、それだけにすでに語りつくされているアルバムですから、いまさら私ごときがその内容について言うことはありませんが、思うことを書いておきます。
一刻も早く聴きたくて、輸入盤店に走って買い求めた
このアルバムが出る直前には私はもうSLAYERに完全に魅了されていて、通学のときにはウォークマン(カセットテープ)で「HELL AWAITS」と「SHOW NO MERCY」を聴きまくり、家ではビデオ(ベータ)で「Combat Tour: The Ultimate Revenge」(VENOMとEXODUSもカップリングされたライヴ映像作品)を見ながら「Die By The Sword!!」などと叫びつつ首を振る毎日でした。
で、BURRN!だったかなんだったか忘れましたが、輸入レコード店の広告で「SLAYER:3rd」というリリース情報が出ているのを発見したんです。
ちょっと待ってれば国内盤が出るだろうとは思ったのですが、とにかく早く聴きてえ・・・という衝動を抑えきれず、新宿の輸入盤店に電車に乗って買いに出かけました。まだガキでしたが当時ようやくバイトをし始めてレコードを買うおカネはありましたから、「買うべきか否か」という迷いは1ミリもありませんでした。
で、待望のSLAYERの3rdアルバムを入手!
一見するだけで「ヤバい」と直感させるジャケット・デザインがそそります。
ドキドキしながらレコードをターン・テーブルにのせ、針がレコード盤に落ちた次の瞬間、あの超暴力的かつカッコよすぎる「Angel Of Death」のイントロが襲ってきました!!
これにはヤラれた。イントロのリフだけで思わず「おぉぉぉ~!」と感嘆の声が漏れ、トム・アラヤの絶叫とともにステレオの前で首がちぎれそうな勢いでヘドバン開始!
このアルバムからメジャー・レーベルに移籍。曲は猛烈にクールだったもののサウンド・プロダクションは激ショボだった1stと2ndに比べ格段にクリアかつ迫力満点な音に。
音質が改善したのもビックリしましたが、曲そのものもスタイルは前作までとかなり変化。「Hell Awaits」や「Black Magic」でみせていた回りくどさは一切なし。ド直球で聴き手の鼓膜をブチ破りにきます。
「Angel Of Death」のあとも「Piece By Piece」「Necrophobic」と、レコードの回転数を間違ったのでは・・・っていうくらいのスピードで突進していきます。
速い。圧倒的に速い。これは、当時メタルを「もっと速くて、もっとカッコいい曲を聴きてえ!」という動機で聴き漁っていた私にはまさに「これこれ、こういうのが欲しかったんだよ!」という理想のサウンドでした。
最後の「Raining Blood」ではちょっとSEを入れてみたりしてますが、前作「HELL AWAITS」の大作志向とはまったく対照的。完全破壊の快感を聴き手に残してあっというまに終わります。
全編速いけど、ただ速いというだけではなかった
「HELL AWAITS」アルバムは複雑な曲展開が多く、ナイフでザクザクと切り刻まれるような残忍さを感じましたが、このアルバムは言ってみれば巨大なハンマーで一撃のもとにアタマを粉々にされるような殺傷力をもっていましたね。
そしてなによりも凄いのは、これだけのスピードとアグレッションをまき散らしながらもキャッチーなリフのおかげで1曲1曲がそれぞれ印象的であるところ。
このあたりが凡百のスラッシュ・メタルバンドと違っていたところでしょう。「Epidemic」なんてイントロのドラムスだけでイッパツで印象づけられちゃうし、「Raining Blood」も「ドドドン」っていうだけで「あ、あの曲」とわかる。こういった耳に残るフックが全曲に用意されている。めちゃめちゃ速くてカッコいいけど全部同じ曲に聴こえる・・・というのはエクストリーム・メタルとしては二流なんだな。いや、SLAYERが凄すぎるというだけなのかも。
まあ今になってみると、「SHOW NO MERCY」でのIRON MAIDEN的メタルの風味や、「HELL AWAITS」での大作主義的展開のほうが私個人としては好きなんですよね。だから、現在になってCDに手をのばす頻度は実はその2枚のほうが「REIGN IN BLOOD」よりは高いんです。
しかし「REIGN IN BLOOD」は、スラッシュ・メタルの究極の姿を提示してみせた。
「スラッシュ・メタルは速くてカッコよければいい」っていうのが私の持論ですからね、その意味では、究極的に速くてしかもキャッチーでカッコいいこのアルバムはまさに究極。
なんだかんだと細かいことを言う必要はなし。とにかく聴いて震えるべし。
で、SLAYERはこの次のアルバム「SOUTH OF HEAVEN」では驚くべき方向転換をしてしまうのですが、それも致し方なかったんだろうなと思います。
ギターの故ジェフ・ハンネマンは「SOUTH OF HEAVEN」発表当時に「速い曲をやるのは飽きた」と言っていたそうですが、これだけのものをつくってしまっては、同じ方向でやっても「これを超えることはできない」ということだったんでしょう。
次の記事で「SOUTH OF HEAVEN」についても書いてみることにしましょう。
→思い出の名盤:SLAYER「SOUTH OF HEAVEN」
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