この12月に来日のJUDAS PRIESTの名作をふりかえる記事の続き。ほんとうは来日までにすべて終えようと思ってましたがなかなか時間がなく遅れてしまっています。このぶんだと全部終わるには1年くらいかかりそう。
私が初めてJPを体験したのが中学生のときに聴いた当時の最新作「DEFENDERS OF THE FAITH」で、→ヘヴィ・メタルとはなにか、を思い知らされた名盤~「DEFENDERS OF THE FAITH」/JUDAS PRIEST~ 、次に聴いたのがその前の作品「SCREAMING FOR VENGEANCE」→思い出の名盤:問答無用の名作!JUDAS PRIEST「SCREAMING FOR VENGEANCE」!。
そのあとも、新しい順にさかのぼって聴いていきました。幸いにして私が使っていた貸レコード店にはJPのレコードがほぼ揃っていました。ということで次に聴いたのは「POINT OF ENTRY」。邦題は「黄金のスペクトル」。1981年発表。学校で英語を習って、洋楽レコードを借りるといちいち辞書で調べながら歌詞などを読んで勉強していた私にとってはまたまた意味不明の邦題でした。当時の邦題はそんなのばっかりでしたね。
数ある「問題作」のなかでも最も評価がわかれる作品かも?
半世紀以上のキャリアをもつ世界的バンドなだけに、その歴史のなかにはターニング・ポイントといわれるようなときがたくさんあり、アルバムも時代によって作風が異なるものもある。
あたらしいものは貪欲に取り入れようろいう意欲や、俺たちはヘヴィメタルバンドだ、という信念。それが微妙にまじりあってバランスをとりながら存続してきた。そのなかで、シンセサイズドギターを導入しヘヴィさが後退した「TURBO」、ロブ・ハルフォードが抜けてモダンヘヴィネスに接近した「JAGULATOR」など、「問題作」と言われた作品がうまれましたが、この「POINT OF ENTRY」も評価のわかれる作品。
ロブ・ハルフォードもこのアルバムに関して「最も過小評価されている作品」と語っていたらしい。
amass ロブ・ハルフォード、ジューダス・プリーストの中で最も過小評価されているアルバムは『Point of Entry』だと語る
ガキで無知だった私はそんなことは知らずに聴きました。シンプルなジャケットデザインをみて、あれえ~なんか雰囲気だいぶ違うな、という印象はもちましたが、期待していたのは当然「The Hellion~Electric Eye」みたいな劇的メタル。しかしレコードから流れてきたのは・・・
劇的とか様式美とかいう概念からは猛烈にかけはなれた、あまりにシンプルかつストレートな曲。無知なガキだった私でも「あれ~なにこれ」と思ったのははっきり記憶しています。次作と次々作とはまるっきり違うじゃん。これ以前にたくさん出ているアルバムはみんなこんな感じなのかな? と、ガッカリ、というほどではなかったけれど、肩透かしを食らったという感じでしたね。
2曲目の「Don't Go」もあまりに地味だし、速い曲はねえのかよ・・と思っていたら、3曲目はガキの私にもエキサイトしやすいスピードとパワーのある「Hot Rockin'」で、おお~来た来た!、となりました。
↑これは大好きな曲。曲はカッコイイのにこのPVのダサさは・・。80年代はこういうの多かったけど、JPの場合はそのダサさは群を抜いている感じでしたね。
「Hot Rockin'」で「おお~やっぱりいいね!」となった私ですが、そのあとに続く曲は、とにかく劇的な曲、速い曲が聴きたいと思っていたガキの私には地味すぎたというか、「聴きたいのはこれじゃない」というものばかりだった。ポップとまでは言えないけれど徹底的にシンプル、ギターソロすらもまるでオマケのように少なくされ、ラジオやアメリカ市場を意識したキャッチーで湿り気の少ないメロディの曲ばかり。「You Say Yes」なんかなんだこれ、って感じですよね。SLAYERのケリー・キングがこのアルバムに失望して庭で焼き捨てた、っていうのもわかる。
なのでこのアルバムを録音したカセットテープに手が伸びることは少なく、もっぱらその前に聴いた「DEFENDERS~」や「SCREAMING~」を聴きこむ日々が続きました。
今聴くと悪くないアルバムと思うが・・・
そういうわけで、長年にわたって私の中ではあまり聴くことがないアルバム。
しかし折に触れて聴きなおしてみると、曲そのものはさすがにそんなに悪くない、というのはわかる。
↑「Hot Rockin’と並んでこのアルバム中で私の好きな曲。これはロブが歌ってるからこその魅力が発揮されている曲ですね。
曲は悪くなかったとしても、これに触れた時点で「DEFENDERS~」と「SCREAMING~」しか聴いてなかった私はもちろん、当時リアルタイムで「BRITISH STEEL」アルバムなどを聴いてそういう強力なメタルを期待したファンには受け入れ難かったというのは当然だったでしょう。曲そのものは悪くない、と言いましたがそれはほかのフツーのバンドだったらという話で、JUDAS PRIESTの作品としては、う~ん・・・と言うしかない。
まあそのへんは好みもあるし、JPになにを求めるかによっても変わってくるでしょう。JPのつくったものであればなんでも好き!ロブが歌ってればなんでも好き!という人ならもちろん素晴らしい作品だろうし、シンプルでキャッチーなロックが好き、という人ならJPのなかでも傑作の部類になるでしょう。
しかし、彼らに劇的で重厚で雄々しくて男の哀愁を帯びたヘヴィ・メタルをもとめる私のような人間には、やはり「曲は悪くないけどべつに大好きじゃない」というふうになるかな。JPを知らない方に勧めるとしたら、その優先順位はどうしても低くなるでしょう。
次は問答無用の傑作!「BRITISH STEEL」をふりかえってみます。