USフロリダ州出身のデスメタルの重鎮、DEICIDEがニュー・アルバムを発表。2018年の「OVERTURES OF BLASPHEMY」以来久しぶりの作品のタイトルは「BANISHED BY SIN」。
先行して発表されていた曲を聴いて、ああ50代を迎えてもいつもどおりの圧倒的アグレッションをまきちらすデスメタルをやってくれるようで嬉しい・・・と思って待ちに待っていました。私はスティーヴ・アシェイム(ドラムス)と同い年なんですけど、ライヴの映像とか見るとその猛烈な体力にほんとうに感心する、というか尊敬の念を抱く。まあメタルミュージシャンも高齢化がすすんでいて、もっと年上でも同じことやってる人はいっぱいいるわけですけど、トシ食ったからスローダウンしてメロディアスなことやってみようとか、年相応に複雑なことやってみようとか、もっと売れることやってみようとか、そういうふうに「日和る」人たちとそうでない人たちがいて、DEICIDEは当然後者ということになる。そこにシビレる憧れるわけです。
ということで今回はその感想を。
ジャケ絵はAIにつくらせたらしいが・・・
邪悪なアート・ワークはAIでつくったという話ですね。グレン・ベントンもそれを認めているらしい。
たしかに言われてみればAIっぽいですねえ。私はAIというものを(能動的には)使ったことがないけれど、ネット上でみかける「○○というキーワードでAIに絵を描かせてみた」みたいな画像みたいなタッチだなあというのは感じる。これも「EVIL」とか「SATAN」とか「SEVERED TONGUE」とか「INVERTED CROSS」とか言って書かせればこういうのができあがるのかな。
国内盤の解説によれば、AIに書かせたジャケ絵についてグレン・ベントンは「バカじゃなけりゃああのカッコよさがわかるだろ」と言ってるらしいけれど、すると私はちょっとバカなのかもしれない。う~ん、まあべつに悪くないんだけど、私は90年代の、たとえば「ONCE UPON THE CROSS」や「SERPENTS OF THE LIGHT」のジャケ絵みたいな、ちょっとB級の香りがする、得体のしれないヤバさを内包する「味」のあるジャケ絵のほうがカッコいいと思うなあ。EXODUSの「BONDED BY BLOOD」のオリジナルジャケ絵と、セルフカバーアルバム「LET THERE BE BLOOD」のジャケ絵、どっちが上手な絵かは一目で明らかだろうけど、メタルアルバムのジャケ絵としてはダンゼンオリジナルのほうがカッコいいし「味」があるし「聴きてえ」という気になる。DEICIDEの今回のジャケ絵には残念ながらそういう「味」はない。
→思い出の名盤:「スラッシュ・メタル」の定義・・・「BONDED BY BLOOD」/EXODUS
まあAIが進化すれば「微妙にB級っぽく」「もっと手書きっぽく」とか言えばそれが実現できちゃうようになるのかもしれないけれど、現時点では画像にしろ文章にしろ「いかにもAI」っていうのがまだまだ多いですね。
それにしても「ONCE UPON THE CROSS」なんかはこのジャケ絵で曲名が「Kill The Christian」だのですからほんとそのアンチクライストの徹底ぶりはスゴい。それでサウンドがヘナチョコだったらただのコケオドシバンドか、となるところですが、このアルバムの場合はサウンドも曲も最高でしたからねえ。名盤!
ここで90年代のアルバムの話を出したのは新作のレビューと無関係ではなくて、どうやら今回の「BANISHED BY SIN」、グレン・ベントンは「90年代への回帰」と語っていたらしい。国内盤の解説には「それは主にプロダクションについてのことを指している」と書かれていたが、聴いたかぎり、それは曲自体のスタイルについてもけっこう感じられる気がする。
シンプルでわかりやすい楽曲が並ぶ! しかし邪悪さは相変わらず!
1曲目からしてオールドスクールなスラッシュ味をにじませる曲!
リフもそうだし、グレンのヴォーカルの言葉の乗せ方や高音と低音を重ねるところ(これは前作にはなくて残念だったから復活して嬉しい)とかもそうだけど、随所に90年代っぽさを感じる。ギターソロはメロディアスなのが多くてそこはホフマン兄弟時代とはちょっと異なるけれど、2曲目の「Doomed To Die」なんかはリフといいソロといいヴォーカルといい、90年代っぽさが濃い気がしますね。「Ritual Defied」も90年代に書いた曲と言われたら納得しちゃうかもなあ。私としてはメロディアスなギターソロとかはこのバンドにあんまり求めてない。だからやっぱりホフマン兄弟時代がいちばん好き。
CDには作曲のクレジットが見当たらないけど、CDをWINDOWS メディアプレイヤーでプレイしたときに出るクレジットをみると、そこには新加入ギタリスト、テイラー・ノードバーグの名前もチラホラある。それにしてはDEICIDEの「らしさ」が詰まったリフが多い、という印象。いや前作「OVERTURES OF BLASPHEMY」よりもさらに「らしく」なった気がする。比較的シンプルでわかりやすい、フックのある曲が多くなったような。
しかしすげえMVだな。「SEVER THE TONGUE」のMVなんかは私は目を背けずにいられなかった。
いずれにしろ、「90年代への回帰」というのは悪くない方針だと思うし、それが適度なバランスで練り込まれたデスメタルアルバム! 前作と比較するとギターソロのメロディアスさは後退したがそれは私にとってはマイナス材料ではないし逆に嬉しいくらい。
ジャケット絵も90年代に回帰してくれたらもっと最高だった。スラッシュ・メタルに影響を受けそこから進化していった歴史のあるバンドだけに、今となってはわりと聴きやすいほうのデスメタルだと思うので、これまでデスメタルになじみのなかった人にもぜひとも聴いていただきたい!