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KERRY KING「FROM HELL I RISE」を聴いた

40年近くに渡った活動を惜しまれながらも2019年に終えた(ライヴで復活という話ですがパーマネントなものではないらしい?)、スラッシュ・メタルの始祖にして最も重要なバンド、SLAYER。そのギタリストだったケリー・キングが先日ソロアルバム「FROM HELL I RISE」を発表。

Amazon.co.jp From Hell I Rise

何度も書いているようにSLAYERはガキの私をスラッシュ・メタルの世界へ引きずり込んだ、ある意味人生を変えてくれたバンド。初期3枚のアルバムはもう何百回聴いたかわからないくらい聴いたし、1985年の映像作品「THE ULTIMATE REVENGE:COMBAT TOUR LIVE」(EXODUSとVENOMも収録)でのケリーとジェフ・ハンネマンのプレイをみて一生懸命ギターのコピーを試みたし、1990年の初来日のときには2回観に行って首がちぎれてもいいとばかりにヘドバンしてきました。

伝えられているところによれば、ケリー・キングはSLAYERをもっと続けたかったという話で、すると彼があらたなバンドを始動させたのは必然だったとも言えるわけか。すると方向性としてはSLAYERの路線を継承するのかな・・・と思っていたら、さきに公開されていた楽曲はやっぱりSLAYERそのものな感じでした。

いずれにしろケリー・キングがソロアルバムを出したっていうんなら、とりあえず買って聴かなくてはなるまい・・・ということで予約して買いましたので、現時点での感想を。

良くも悪くもまるっきり(後期の)SLAYER

アルバムは2分弱の序曲「Diablo」から始まります。それがSLAYERそのまんまな感じで、知らないで「SLAYERのニュー・アルバムだぜ」と言われたら間違いなく信じてしまいそう。それに続く「Where I Reign」も完全にSLAYERそのもの。

 

混じりっけなしの「スラッシュ・メタル」な楽曲は私にはとても嬉しい。そのうえ(SLAYERのアルバム用に書いた曲もあるっていうんだから当たり前だけど)リフもソロもまるっきりSLAYER・・・とあっては、往年のSLAYERファンならば「おぉ~!」となるところでしょう。

もちろん私もそう・・・だったのは事実ですが、う~ん、期待どおりで嬉しい、という以上のものがあったかというと・・・

せっかく意外な人をヴォーカルに起用したのに・・・

ヴォーカリストをつとめたのがDEATH ANGELのマーク・オセグエダ。

私はDEATH ANGELは好きではなくあまり聴いてないのですが、トム・アラヤとは異なるスタイルのヴォーカリスト。しかし今作では、どう聴いても「わざとトム・アラヤに寄せただろ」としか思えない歌唱を披露している。

 

ライナーノーツには、マークが「意図的にトムに寄せようとは一切考えなかった」と語っていたと記載されている。まあそれはウソではないのかもしれない。SLAYERそのものの曲にアグレッシヴな歌唱をのせたら自然にトム・アラヤみたいになっちゃった、っていうのが事実なのかも。

それはそれで別にいいんだけど、ひたすらスクリーム一辺倒で、全部同じにしか聴こえないのがなあ。トム・アラヤだってそうだったじゃねえか、と言われればそうかもしれないとしても、(少なくとも初期のSLAYERの)トムのヴォーカルラインには明確にキャッチーさがあったからそうは感じなかった。それに対して今作はそういうの全然ないんだもんなあ。だから全部同じに聴こえる。それに少しはマークらしさがにじみ出るような曲があってもよかったのでは。そうすればもうちょっとバラエティに富んだ作風になったかもしれないのに。そのへんはわざとなのかそうでないのか。

ともあれ、初期SLAYERのようなキャッチーなところがあれば、トムと同じようなこのヴォーカルでももちろん気にならないはずなんですけどね、「全部同じだなあ」と感じてしまうということはつまり曲のデキとしてはあんまりたいしたことない、っていうことなんじゃないか。

変わらないアグレッションをたたきつけてくれることには感謝!

実力派のヴォーカリストが入ったんだからしっかりした歌メロのメタル曲もあったりするのかな、と思ったらそういうの一切ない。まあそれがあったらあったで日和ったみたいでイヤだからいいんですけど、全編にわたって同じような曲ばっかり、というふうに感じるのは事実。

 

と、はっきりいって曲のデキには不満だし、SLAYERそのまんま、といってもそれは(残念ながらつまらなくなった)晩期のSLAYERそのまんま、という話で、それは手放しで喜べることではなかったなあ、という気がしています。

しかし、還暦をむかえる年齢になっても日和らずピュアなスラッシュ・メタルをやってくれる、というところにはもう感謝するしかない。トシ食ったんだからそのぶんちょっとシャレたことやってみよう、とかいうのが全然ない。信念をもって同じことを(SLAYERがずっと同じことをやっていたかといえばそうではないけど)やり続けてくれてるというその一点だけで、多少曲がつまらなかろうがそんなことは別にいいじゃないか、という気にもなる。ケリー・キングにMETALLICAみたいなことやってほしいと思ってるファンはいないでしょうからね。

われわれファンがもとめる、「らしさ」のつまった作品ということで、その意味ではファンは買っておくべきでしょう。残念ながら私のヘヴィ・ローテーションアルバムにはなりそうにないですが、そこは自分の耳で聴いて判断するべき。ひょっとして「いやいや最高だろ! お前の耳はどうなってんだ?」というふうになるかもしれません!

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