ヘヴィ・メタルとはいったいなんぞや、という問いを誰かから浴びせられたときになんと答えるか。
WIKIPEDIAをみればそこには「ヘヴィで歪んだギター」とか「シャウトするヴォーカルが多い」とか「ギターソロがあるのが多い」とか「テンポが速い」とかいう音楽的特徴や、攻撃的・退廃的・悪魔的な歌詞が多いとかいう文化的思想的特徴、それからいわゆる「レザー&スタッド」といったファッションの特徴にいたるまでいろいろ書いてあって、そういうのを調べてみるのも「ヘヴィメタルとは?」という疑問を解消するひとつの助けにはなるでしょう。
しかしそれはあくまでも「一般的にそう言われている、そういうふうにされている」というだけのことであり、当のメタルを大好きなマニアが「ヘヴィメタルとはなんぞや」という問いを浴びたときの返答はまさに人によって千差万別となるでしょう。
たとえばいわゆる「メタルコア」なんてのはヘヴィで歪んだギターと絶叫するヴォーカルがあって、テンポも速いしラウド、攻撃的な歌詞ももっているしファッションもそれっぽいバンドもあるけれど、私に言わせればそれは「ヘヴィメタル」ではない、というか、「メタルってなに?」と訊かれてそれ系のバンドの名を挙げて「これを聴けばわかるよ。これがメタルだ」と答えることは絶対にない。ヘヴィでウルサイからといってそれすなわちメタルということにはならない。
じゃあお前ならいったいなにをもって「これを聴け。これがメタルだ」というふうに他人に示すのか、と言われたら、それはやっぱりBLACK SABBATHやJUDAS PRIESTやIRON MAIDENということになる。いま挙げたバンドに直接的にでも間接的にでも、まったく影響を受けていないヘヴィメタルバンドというのは、現在においてほぼ見当たらないといってもいい(オレらはそんな奴ら知らない、完全にオリジナルだ、と言い張るミュージシャンもいるでしょうが、たぶんじっさいはそんなことはない)。まあ今なら「PANTERAとMETALLICAを聴いてバンド始めたからそんなの知らないぜ」とかいうのもいるかもしれないけれど、そういう連中はおそらく私に言わせれば「ヘヴィメタル」とは呼べない音楽をやっているから、するとそれは「ヘヴィメタルバンド」ではない。
そんなふうに私にとって「これこそがメタルだ」という音楽を創造し続けてくれた偉大なバンドのひとつ、JUDAS PRIESTが12月に来日予定。私は観に行きませんが、ロブ・ハルフォードやイアン・ヒルの年齢を考慮すれば、これが最後になる可能性もある。彼らのパフォーマンスを未体験の方は、いちおう観に行っておくべきかもしれない。
ちなみに私は1991年4月、「PAINKILLER」のツアーでの来日公演を観に行きました。たしか神奈川県民ホール。この話どこかに書いたっけ。
↑ 先日片づけをしたら出てきた、「THE PAINKILLER TOUR 1990/91」のパンフレット。懐かしい。
↑当たり前だけど若い!K.K,ダウニング。これがもう30年以上前か~。当時大学生だった私の髪が少なくなるのも当然。ロブ、グレン、K.K.、イアン、スコットというラインナップのPRIESTを観られたのは幸せでした。
このラインナップ、もしくはドラムがデイヴ・ホーランドであったときも含め、それが私にとってJUDAS PRIESTであり、「ヘヴィ・メタル」とは?というのをさまざまな意味で体現してくれていた。
そのながい歴史のなかで、多少のスタイルの変化はあったものの、根幹となる部分が「ヘヴィ・メタル」であり続けた、というのは一貫している。
↑半世紀近くも前にこんなスゴイことやってたんだもんなあ。これを聴くと、「ヘヴィ・メタル」という音楽の様式をつくりあげたのはやはりJUDAS PRIESTであり、JUDAS PRIESTこそがメタルそのものである、と再認識させられる。
そして先日発表した最新作に至っても、徹頭徹尾「ヘヴィ・メタル」であることをやめてない。
う~ん、いろいろ聴きなおしていたら、やっぱり来日公演は観ておくべきか・・という気になってきました。しかしすっかり衰えた(みんな言いたがらないが間違いのない事実)ロブ・ハルフォードをみたくない、っていうのもあるんですよね。若いヴォーカリストを雇ってロブはソングライティングに参加するとか、そういう方向もアリだとは思うけどなあ・・。
といっても一方で、年齢に抗いどこまでも挑戦することをやめないその姿勢には尊敬の念をおぼえるのも間違いなくて、その姿を目に焼き付けておくべき・・という気持ちもある。チケットはまだ売っているのか。値段はびっくりの20,000円。高いなあ。円安だから仕方がないのか。1991年の公演はたぶん5,000~6,000円くらいで、それくらいだったら学生だった私でもなんとかなったわけですが、20,000円とかいう世界になると今の若い人にはキツイだろうし、行こうとも思わないでしょうね。メタルという音楽の未来のためにはもうちょっと値段をがんばる必要があったのでは。
ともかく、2万円、と言われて「高い」と思ってしまうところに私のほんとうの気持ちがあらわれているのかもしれません。まあ2万円で「安い!観たい!」と思うようなバンドがほかにいるかというと、いまのところ思いつきませんけどね。
今回はここから彼らの名盤について言及していこうと思っていましたが、長くなりそうなのでここでいったんやめて、また次から書いていこうと思います。これまでは、たくさんの人が語りつくしている彼らの名盤を、私ごときが今更ああだこうだというのもなあ、と思って控えていましたが(ひとつだけ書いてます→ヘヴィ・メタルとはなにか、を思い知らされた名盤~「DEFENDERS OF THE FAITH」/JUDAS PRIEST~)、来日を間近にして彼らが話題にあがることも多くなっている今を逃してタイミングはほかにない、と思うので。次の記事で、まさに「これぞヘヴィ・メタル」というのを体現したあの名盤について書いていきましょう。