その素晴らしい音楽によって私も含めたくさんの人々をヘヴィ・メタルの世界に引き込み、現在活躍している世界中のヘヴィメタルバンドにも絶大な影響を与えた偉大なバンド、イングランド出身のJUDAS PRIEST。
2024年はそのJUDAS PRIESTの1stアルバム「ROCKA ROLLA」発売から50周年。そして80年代のヘヴィ・メタル人気全盛期に出た、まさに金字塔的な歴史的名盤「DEFENDERS OF THE FAITH」から40周年となりますね。
何度か書いていますが「DEFENDERS OF THE FAITH」は中学生だった私にヘヴィ・メタルとはなにか、ヘヴィ・メタルの魅力とはなんなのかを知らしめてくれた、ある意味私の人生を変えた作品。それからもう40年か。40年もたてば当時ガキだった私の髪の毛が薄くなってくるのも当然。
JUDAS PRIESTはそんな長いあいだ、いやそれ以上の年月、メタル界を引っ張り続けてきてくれた。もはや生ける伝説。
その偉大なバンドが19枚目のアルバムとなる最新作「INVINCIBLE SHIELD」を発表。アルバム発売前に数曲が先行して公開され、それが素晴らしい曲ばかりだったから「こりゃあひょっとして期待できるかも!」と記事にも書き、期待して待っていました!
ボーナストラックの入った国内盤「デラックス・エディション」を入手! まだ何度かしか聴いてませんが、現時点での感想を。
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アグレッシヴかつキャッチーな曲が並ぶ!
先行して最初にリリースされた「Panic Attack」がアルバムの冒頭をかざります。いかにもIRON MAIDENがやりそうなイントロを聴いて、最近のIRON MAIDENが大嫌いな私は嫌な予感を抱きましたが、そこはさすがJP。そんな心配は無用でした。ヘヴィ・メタル以外の何物でもない曲。曲展開やギターソロはあの名曲「Painkiller」を彷彿とさせる!ていうかほとんどそのまんま、っていうのは前にも書きましたね。
→今週聴いたもの:2023年11月16日~11月22日(DIEMONDS、STORMTHRASH、VALLEY'S EVE)
そして2曲目に入ってるのが「The Serpent And The King」。
ハイテンションなロブの歌唱が若々しく躍動するアグレッシヴな曲。これも「PAINKILLER」アルバムに入ってそう。ロブが高音域を出せなくなった結果イマイチ印象的な歌メロがが少なくなってきてる気がする・・・とだいぶ前から思っていたんですが、これを聴くと「すみませんでした」と言うしかない。AIで合成したんじゃねえの?と疑いたくなる若々しさ。
3曲目もスピードナンバー、アルバムタイトル曲の「Invincible Shield」。ここでもロブのヴォーカルが冴えわたっている。
個人的も最も好きなのは6曲目「Crown Of Horns」。これはダントツに素晴らしい!
引き裂くような高音ヴォーカルもいいけど、包み込むような甘美な味わいの歌唱もさすが。全人類的な愛に包まれるような気持ちになる美しい歌メロも素晴らしい。
このアルバム、ロブの歌唱の素晴らしさが聴きどころ、というかそれが中心となる作品だと感じますね。もちろんJP伝統のツイン・リードの絡みとかもあるんだけれど、どこまでも控えめというか地味。「Rock Hard Ride Free」みたいな、ギターも自己主張しまくり、ギターソロだけで胸が熱くなるようなのが欲しいなあ、ってのはどこまでもオールドなJP像にしがみつくオッサンの発想なのかな。
その次の7曲目、「As God Is My Witness」ではまたまたアグレッシヴに。「RAM IT DOWN」アルバムに入ってそうなリフがカッコいい。
カッコいい曲が多いし、間違いなく素晴らしい作品。大絶賛されているのも納得。でも・・・
このように、さすがだ・・・と言うしかない曲が多いんですが、8曲目以降は(キャッチーでイイんだけれども)目の覚めるような曲はそんなにないかなあ~という気が。ボーナストラックの「The Loger」は「なにこれ?」っていう毛色の違う曲ですがこれは他人の曲(じつはけっこう気に入っちゃった)。
前作「FIREPOWER」も聴き進めるにつれ右下がりになっていく印象があったんですが、そのへんを継承しちゃった感じ。そして「FIREPOWER」と同じく、キャッチーかつコンパクトな作風。
それが好評でセールスも良かったんだからわざわざ変える必要もないし、曲のクオリティは前作を余裕で上回っているから、巷で大絶賛されるのもわかる気はします。
でもどうかなあ。「FIREPOWER」も出たころはみんな凄い凄いと言ったが今は(もちろん悪くないんだけど)「そうでもない」っていう意見もよく見るし、このアルバムもそうなるような気がしないでもない。もう十何年も前から「これがファイナルツアーになる」とか解散するとか言ってファンをヤキモキさせたレジェンドバンドが新作を出してくれて、それが(私としては予想外の)素晴らしい作品だったもんだからみんなちょっと舞い上がっちゃってるところもあるのでは。
それから、プロデューサーのアンディ・スニープはもう現在のJPには必要不可欠な人物になっているようですが、彼のかかわったメタルアルバム、いろんな意味でみんな小奇麗でコンパクトになっちゃう気がするんですよねえ。どれも同じような感じになる。違うバンドの作品でもみんなそうなるんだからそこが彼の天才たるところなんだろうけど、AMON AMARTHなんかはまさに彼を起用するようになってからつまらなくなったし、SAXONもまるっきりフツーの、そこらじゅうにいるメタルバンドになっちゃった。JUDAS PRIESTもその色にだいぶ染まってる気がする。「DEFENDERS OF THE FAITH」のような湿ったサウンドと勇壮なメロディが好きな私としては、そのへんがちょっと気になるところでした。
やはり、(その歴史のなかで音楽性の変遷があったバンドの新作が出たときはみんなそうだけど)JUDAS PRIESTになにを求めるかで評価は変わるんじゃないのかな。アンディ・スニープが完成させた現代のメタル像が好きなら「大傑作」となるでしょうが、私のようにドラマティックでヒロイックでジメジメした様式美メタルを彼らに求める人間には「素晴らしいけどそこまででは・・・」という話になるかもしれない。
といっても、レジェンドたるJUDAS PRIESTが満を持して出した作品。いまは「イイけどそこまで大絶賛するほどでは・・」と思ってる私も、数年たったら「やっぱJPはすげえ」と言うことが変わるかもしれません。もっと聴き込んで、「間違っていました!すみませんでした!」っていうふうになったらまた書くことにします!