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ガキだったころになにもわからず買ったブート盤が出てきたので聴きなおした。

まだメタルについても、もちろん世の中というものについても無知だった高校生くらいのころ、バイトしたおカネが入ると新宿やお茶の水のレコード店に電車を乗り継いで出かけていきレコードを買い集めていました。

買い集める、といっても、私が昭和61年頃はじめてバイトというものをしたときの時給は540円。それで得られる金額はたかがしれていたし、男の子なら誰でも女の子をゲットすることしかアタマにない時期、バイトしたカネを全部レコードに突っ込むということは考えられなかったから、「どのレコードを買うべきか」というのは非常に切実な問題でした。

だから、レコード会社やミュージシャンに忖度した提灯ディスクレビューは犯罪と同じ・・ということは前に書きましたが、→ただの「紹介」みたいなディスク・レビューの罪深さ まだ子どもで経験というものが少なく、インターネットなどないから情報源は音楽誌と友人からの口コミだけ、という状況下では、ある程度の失敗をしないと成長できなかったしそれは必要な失敗でした。

「失敗」っていうのは、自分とはかけ離れた感性を持つ人のレビューに騙され(これは「騙された」というのとはちょっと違うか)てどうしようもないものを買ってしまったり、提灯レビューに騙されて(これは許せない)クソをつかまされたり・・といった経験のことなわけですが、なにもわからなかった少年時代は、間違って「ブート盤」を買ってしまったこともあります。

「ブート盤」というのはいわゆる「海賊盤」とか「コレクターズ盤」とか「プライベート盤」などとも呼ばれますが、つまり著作権を無視してつくられたレコードやCDやDVDなどのこと。ライヴ会場に録音機器を持ち込んで勝手に録音した音をレコードにしたものとかですね。

同種の違法なものにいわゆる「リプロ盤」、つまり正規の商品にソックリなものをコピーして勝手に売られるもの、などもありますね。こちらはマニアでも見分けがつきにくいものもあるから厄介。

このあたりのものはどれだけ売れても著作権者であるミュージシャンにはお金がまったく渡らず、買うことは犯罪者が儲けることの片棒をかつぐことになるから、決して買ってはいけないのですが、リプロ盤じゃないと入手が超絶困難な音源とかもあったりするし、大好きなバンドの貴重なライヴ音源が聴けるならブートでもいいや、と考えてしまう人がいるのもムリのないことだし、その気持ちもわからなくもない。だからそれをつくる人間も売る人間も買う人間も絶滅しない。

しかし、「ほしい気持ちもわかる」と言っても、それは「ブートである(からクオリティが低い)」というのを承知で買う場合の話。私の少年時代は、「プライベート盤」という言葉の意味がわからず、好きなバンドのライヴのレコードだ!ということで喜んで飛びついて買ってしまった。

そのうちの1枚を聴きなおしたから書いておこうと思って。なかなか片付かない親の遺品をいま意を決して整理しているところなんですが、その過程でどこに行ったかわからなくなっていたレコードがいっぱい出てきまして、もう親に処分されてしまったと思い込んでいた私のレコードも発見したんです。

初期SLAYERのライヴ! 音質は最悪! 演奏は最高!

そのなかの1枚がこれ。SLAYERの1984年11月9日、USメリーランド州ボルチモアでのライヴをおさめたレコード。「THE FINAL COMMAND」と銘打たれています。表側には、まだ若くて髪の毛がいっぱい(生え際は年齢不相応に後退し始めているのがわかるけど)ある、ケリー・キングのお姿が。

 

表はケリーが一人で、裏側にはちゃんと四人の写真が。どこかで見た写真。

 

 

1984年11月ということは、1stアルバムに続くEP「HAUNTING THE CHAPEL」を出したばっかりっていうくらいの時期か。セットリストは当然1stアルバムとそのEPの曲で構成されている。「Face The Slayer」はけっこう珍しいのかな。

 

で、聴きなおしてみたんですけど、音そのものは当たり前ながらいかにもブートレグってかんじでものすごく劣悪。なにがヒドイって、ジェフ・ハンネマンのギターパートがほとんど聴こえない。ケリーのギターが轟音で前に出てて、そのバックにデイヴ・ロンバードのドラムとトム・アラヤのヴォーカルとベースが紛れてる感じ。ステージ向かって右側のほうにいて録音したのかな。

でも、それでもカッコいいんだからSLAYERはほんとスゴイ。ケリーのギターだけが前面に出ているおかげで、勢い重視の荒っぽいケリーのギタープレイのカッコよさをたっぷり堪能できちゃう。

しかしまあ~とにかく速い。もう笑っちゃうくらい速い。「The Final Command」なんかの速さはもう尋常じゃない。1stアルバム中屈指の速い曲だった「Show No Mercy」もさらにスピードアップ。デイヴ・ロンバードのド迫力ドラミングもちゃんと堪能できます。

 

途中で何度かドラム以外の音がぷつっと聴こえなくなる瞬間があったりしますが演奏自体のスピードとアグレッションはまさに圧倒的だし、SLAYERのファンなら、安ければ買ってもそれほど損はしないのかも。いや、でもやっぱりジェフのギターがほぼ聴こえないってのはキツイかな。

ガキだった当時の私はブートというものがこの世にあるのを知らなかったので、「なにこれ」となり、私よりもメタル経験値の高い友達に「こんなの買ったんだけど・・」という話をして、「それはねえ・・・」と教えられ、「そうだったのか」となった次第。

まあ音の悪さにガッカリしたのは事実なんですが、まだガキでなにもわからなかったし、大好きなSLAYERの、ほかでは聴くことができないライヴ音源に触れられたということもあってか、不思議なことに「騙された」「損した」という気持ちにはあんまりならなかった。演奏がとにかくスゴイというのもあるんでしょう。これがほかのヘナチョコなバンドだったらそうはならなかったかも。

 

私自身はブート盤の存在自体あってはならないと思ってますから、これを「見つけたら買うべき」とかおススメする気は1ミリもありませんが、さすがSLAYERというべきか、劣悪な音質であってもちゃんと楽しめる作品になっちゃってるので、もしみつけて、タダで手に入るようなら聴いてみるのもいいのではないでしょうか!

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