前の記事で、スウェーデンの伝説的ブラック・メタルバンド、
BATHORYの2ndアルバム「THE RETURN......」について書きました。
→思い出の名盤:魔界への扉をひらく!BATHORY「THE RETURN......」
演奏も音質も劣悪で、とてもじゃないが「ハイクオリティ」とは言い難い作品だったけれど、
その邪悪さ、禍々しさは後進のバンドに絶大な影響を与えた名作。
今回はこれに続いて1987年に発表された3rdアルバム
「UNDER THE SIGN OF THE BLACK MARK」。
個人的にはBATHORYの最高傑作と思っている超名盤です。
文句ナシにメタル史に残る名盤!
1stと2ndでVENOMからの影響を丸出しのノイジーなサウンドを提示していたBATHORY。
しかし3作目「UNDER THE SIGN OF THE BLACK MARK」では
ついにそのオリジナリティを完成させた・・・と思います。
Amazon.co.jp UNDER THE SIGN OF THE BLACK MARK
例のヤギの被り物をした男がガッツポーズしてる一見ヘンな絵。
最初はこれを「絵」だと思っていたのですが実は写真だということを後になって知りました。
ヒト以外は絵に描いたセットで、それを写したものらしいですが、
不気味さを演出するという点においてはこれは凄い効果でしたね。
アルバムカヴァーのデザインのクレジットはQuorthon(BATHORYの中心人物。ていうか彼自身がBATHORY。故人)自身となっていて、
音楽だけでなくこういった方面でも彼は天才だったんだなあと痛感します。
LPのインナー・スリーヴには、
16世紀末~17世紀初頭のハンガリーの殺人鬼、エリザベート・バートリーの肖像とともに、
収録曲の「Woman of Dark Desires」について「-dedicated to the memory of Elizabeth Bathory」と記されています。
そしてラストの曲「Of Doom......」については「-dedicated to You!」と記されており、その歌詞はファンへむけたアンセム的な内容になっています。曲調は全然アンセムじゃないし、聴いても歌詞は聴き取れないけど。
ちなみにBATHORYに多大な影響を与えたVENOMも、バートリー伯爵夫人をモチーフにした
「Countess Bathory」という曲をやっています。
Quorthonは生前「VENOMなんて聴いたこともなかったし、影響なんか受けてない」
と言っていたけど、バンド名はこの曲からとったんでしょうね。
初期のメンバーはそのように証言していたらしいです。
それはともかく、「UNDER THE SIGN OF THE BLACK MARK」アルバムの内容。
前2作とは少し違った作風になり、
スピードも曲のクオリティも圧倒的にアップしていました。
まるで葬式のような荘厳さの「Nocternal Obeisance」がブツンと切れて突然始まる
「Massacre」の圧倒的スピードにまずノックアウトされます。
う~ん。速い。ウルサい。そして・・・カッコいい!。
このアルバム発売当初、メタル誌「BURRN!」ではこれを酷評していましたが、
このカッコよさをわからんような奴がメタルを扱う商業誌で文章を書かないでほしい・・ていうくらいのもの。
それも無理もなかったとは思いますけどね。なにしろそれ以前にはこんなバンドはいなかったんだから。
常識をぶち破る天才のやることはいつも凡人にはなかなか理解できないものなんでしょう。
それはそれとして、この圧倒的スピード、シャリシャリしたギター、ひたすら冷酷に突っ走るドラム、喚きまくるヴォーカル・・
という、90年代以降「ブラック・メタル」と呼ばれたサウンドのテンプレートを示した作品となりました。
カッコいい。
のちにDARKTHRONEだのIMMORTALだのMAYHEMだのといった数えきれないほど多くのバンドたちが
コレをマネした(している)のですが、
オリジネーターの凄味にはなかなか敵うことができませんでした。
次作へとつながる、エピカルでドラマティックな曲も
スピードのある曲はものすごく速くなったのと同時に、
この作品ではスローでキャッチーな曲も見受けられます。
ドラマティックでエピカルな雰囲気。
シンセサイザーを使ってみたり、このあたりは次作
「BLOOD FIRE DEATH」からはじまる
いわゆる「ヴァイキング・メタル」路線へとつながっていきます。
BATHORYの「ヴァイキング・メタル」路線の作品は
個人的には好きなものとあまり好きじゃないものがあるのですが、
4枚目「BLOOD FIRE DEATH」は
エクストリームな風味も残しながらエピカルな雰囲気、という絶妙なバランスをもち、しかもカッコいい曲が満載という素晴らしい作品で大好き。
というわけなので、次の記事で「BLOOD FIRE DEATH」についても書いておきます。