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思い出の北欧メタル名盤⑤:メロディック・デスの金字塔!AMORPHIS「TALES FROM THE THOUSAND LAKES」

私が若いころに感化されたメタル名盤をふりかえる記事の続き。

これまでは私が中学生や高校生だったころに聴いた作品について書いてきましたが、今回はだいぶ時代を下って、今から振り返ってみれば残念ながらヘヴィ・メタルの低迷期となった、1990年代に出た作品を。

1990年代になってグランジ/オルタナティヴがブームとなり、METALLICAやPANTERAがヘヴィさとグルーヴを重視したスタイルの作品を出して大ヒットをとばしました。そして猫も杓子もそのスタイルをマネして同じようなサウンドをやりだしたころ。

私はグランジだのオルタナティヴが大嫌いだったし、METALLICAもPANTERAも「そうなって」から以降はどうも好きになれなかったので、メタルのメインストリームを追いかけることをやめてしまい、アンダーグラウンドの世界で発展し始めていたデスメタルに傾倒していきました。

高校生だった80年代半ばころにはあれほど好きだったMETALLICAに対しても「METALLICA?そんなもん・・」というスタンスになり、聴くのはもっぱらMORBID ANGELやSUFFOCATION、DEICIDEなどのデスメタルに。DEMOLITION HAMMERなんかも好きでよく聴いていました。

そのうえ私は93年に就職し社会人となり、その会社が今でいうところの「ブラック企業」だったもんだから非常に忙しく、やれグルーヴだのなんだのと言いだしてつまらなくなったメタルを追いかけてる暇はなくなって、CD店(当時はまだそういうリアル店舗がいっぱいありました)にたまに立ち寄ったときに好きなバンドの新譜があれば買ってみる、っていうくらいになっていきました。

メタルから離れ始めていた私の心が鷲掴みにされた

そんななか職場近くにあるCD店で見つけたのが、90年代から現在に至るまで活動しているフィンランド出身のAMORPHIS、その2作目、1994年発表の「TALES FROM THE THOUSAND LAKES」。

Amazon.co.jp Tales From the Thousand Lakes

メルカリ TALES FROM THE THOUSAND LAKES

前述のようにそのころの私はヘヴィ・メタルからだいぶ距離を置いていたので、知らないバンドのCDを新品で買うようなことはほとんどなくなっていたんですけど、エピカルな雰囲気のジャケ絵が聴く気をそそられたし、私が好きな「デスメタル」にメロディをもちこんだ「メロディック・デスメタル」なるものが北欧を中心に勃興してきているというのは聞いていて、どうやらこのバンドはそれであるらしいことは知っていたから、ちょっと買ってみるか、という気になったんだと思います。この時点で「メロデス」らしきものはたぶんCARCASSの「HEARTWORK」アルバムくらいしか聴いてなくて、北欧のいわゆるメロデスを体験するのはこのAMORPHISが最初だったと記憶。

どんなふうにメロディックなんだろ・・と期待しながらCDをプレイしますと、なんとも寒々しい、まさにジャケ絵のイメージそのままのイントロが流れてきます。ここからズドズドズド、グォォォォォォ・・・って超スピードで襲ってくるんだろうなあ~・・・

と思ったら、予想通りだったのはグォォ~っていうデス声だけで、ちっとも速くなることはなく、ひたすらにミステリアスかつ寂寥感あふれるメロディアスなフレーズが流れてきました。

これは初めて体験するサウンドでした。さきに聴いていたCARCASSもメロディックでしたが、それとはベクトルがまったく異なる。北欧の民族的旋律を取り入れたメロディアスなリフがとにかく耳に残るし、たまに入ってくるクリーンヴォイスがまたいい味を出してる。メロディアスなリフとデス声とクリーン声、そして寒々しさをさらにアップさせる美しいキーボードのサウンド。

デスメタルにメロディを持ち込んだ、というだけなら後述するように当時からほかにもそういうバンドがいっぱいいたわけですが、そこに北欧土着のメロディや叙事詩的なエピカルさを導入し、それが見事に成功して感動的メロディック・メタルになっちゃったところがあまりに独自でした。そのメロディはもはやあざといというかクサいというか、これを日本人が好きにならないはずがない、ていうくらいのものでしたね。

94年ころの私は私はブラック企業でいいようにこき使われ、夜の9時に出勤→朝9時に勤務終了、その後サービス残業を昼くらいまでしてから帰宅、昼過ぎに寝てからもなにかにつけて電話がかかってくる・・という生活でした。毎日毎日とにかく疲れていて、常に眠気に襲われながら生きていました。このアルバムに満載の、なんとも胸に迫ってくる寂しいメロディ、地の底で魔物が咆哮しているようなデス声を聴くと、辛かったブラック企業人生活、疲れと眠気に支配されていたあのなんともいいがたい感覚が思い出されてくるのです。

何度も書いたように、聴きなおすとその当時の思い出がよみがえってくる、っていうのは、その曲にそれだけの力があるってことのあらわれであり、そういう曲やアルバムってのは人生においてそう多くあるものではない。「TALES FROM THE THOUSAND LAKES」は私にとってそういうアルバムであり、死ぬまで聴き続けることはもう間違いないのです。

北欧メロディック・デスといわれたもののなかではダントツの名盤!

ということでAMORPHISに完全にノックアウトされ、「メロディック・デスメタル」とはなんて素晴らしいんだ!と感動した私はその後、同じように「北欧メロディック・デス」と分類されていたIN FLAMESやDARK TRANQUILLITYなんかも聴いてみたりしました。

しかしそのへんは私には刺さらなかった。そのへんのバンドの初期作はみんな名作と言われているけど、残念ながらなにがいいのか私にはいまだに理解できないものも多い。そんなに悪いとも思わないし好きな曲もなくはないんだけど。たぶんそれはそのへんのバンドの、ブルータルなデスメタルに美しいメロディ(というかフレーズ)を「とってつけた」ような感じのサウンドが気に入らなかったからだと思うんですよね。なんかもう必然性が感じられない曲構成。だからメロディが印象に残らない。

それに対してこのAMORPHISの「TALES FROM THE THOUSAND LAKES」の「メロディック」さにはそういう「とってつけたような」感は感じることはなかった。ブルータルそのものなデス声も、キャッチーでメロディックなギターフレーズも、すべてがそのモチーフとなったフィンランドの民族叙事詩「カレワラ」の世界観とマッチしていた。その意味でも完成度は段違いの圧倒的名作といえるでしょう。

 

その次の「ELEGY」アルバムもとんでもない完成度のスゴイ作品でしたが、デスメタル色はさらに薄れてしまって、その後の作品は私もあまり一生懸命追いかけなくなってしまいました。最近の作品もいくつか聴いてますが、メロデスという狭いカテゴリーわけのなかにおさまらない幅広い音楽性に進化して「スゴイ!」と思うことはあっても、感動に震えて何度も聴きなおすようなことはなくなりました。どうしようもないメタルコアになっちゃったIN FLAMESなんかよりは100万倍イイとは思いますけど。

それはともかく、90年代当時、北欧メロディック・デスと呼ばれたもののなかではこのAMORPHISとSENTENCEDが個人的に最も刺さったバンドであり、「TALES FROM THE THOUSAND LAKES」はまさに必殺の棺桶アルバム!。もし未聴なら今すぐ買うことをお勧めしておきます!そういえばSENTENCEDの作品については触れてなかったので、今度書いてみましょう!

思い出の北欧メタル名盤⑥:慟哭の美旋律メタル!SENTENCED編。

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