80年代から活動し2枚のアルバムを出しいちど解散、再結成→再解散を経てまた2014年に再結成、それから2枚のアルバムを出したドイツのスラッシュ/パワーメタルバンド、IRON ANGEL。
先日そのIRON ANGELの再結成後アルバムについて紹介したんですが、
→IRON ANGEL「HELLBOUND」:今日聴いたもの
→IRON ANGEL「EMERALD EYES」:今日聴いたもの
メタル史的に、そしてメタルファンとしてもより重要な意味をもつ80年代のアルバムについてはなにも書いたことがなかったので、ここでやっておきましょう。
IRON ANGELは1985年に「HELLISH CROSSFIRE」、1986年に「WINDS OF WAR」を発表。
2作目については言うことはとくにない(悪い意味で)のであとで適当に触れるとして、まずは最高傑作とされる(もちろん私もそう思っている)1stの「HELLISH CROSSFIRE」を!
スラッシュメタル然としたサウンドだが、いわゆる「三羽烏」とは違った方向性
私がIRON ANGELの曲にはじめて触れたのは、前に紹介したMUSIC FOR NATIONSから出たスラッシュメタルのコンピレーションアルバム「SPEED KILLS Ⅱ」に入っていた「Rush Of Power」だったと記憶しています。
→思い出の名盤:スラッシュ・メタルの深遠さを垣間見た名作コンピレーション「SPEED KILLS Ⅱ~THE MAYHEM CONTINUES・・~」
う~ん、イントロがカッコいいねえ。雪崩をうつように疾走するリフにヒステリックなヴォーカルがクールな歌をのせるスタイルがステキ。
しかし、はじめてきいた当時ももちろんカッコイイとは思ったんですけど、なにしろこのコンピレーションではBATHORYから受けたインパクトがもうカルチャーショックというレベルだったので、IRON ANGELに関してはそれほど夢中になって「すぐアルバム買わなきゃ!」というふうにはならなかったのです。
その後しばらくして、たしか中古盤をみつけてLPを入手したのが、その「Rush of Power」も入ってる「HELLISH CROSSFIRE」。これを聴いて、「うお~もっと早く買えばよかった!」と後悔することに!
Amazon.co.jp HELLISH CROSSFIRE
IRON ANGELというバンド名でこのジャケ絵。メタル好きなら誰でも期待しちゃうでしょ!
そしてそのサウンドは、スラッシュ・メタルであるのは間違いないアグレッションを撒き散らしつつ、ACCEPTあたりっぽい正統派メタル的な要素も盛り込まれた、じつにストロングなものでした! 1曲目「The Metallian」の冷酷なアグレッションにノックアウトされる! 男なら(っていう言い方は現代では怒られるか)なにも考えずに聴いてひたすらクビを振れ!
続く2曲目「Sinner 666」もカッコイイ! 同時期のGRAVE DIGGERを彷彿とさせます。歌が意外とキャッチーなのがじつにイイですなあ!
個人的には「The Metalian」や「Rush Of Power」みたいなスラッシュメタル然とした曲こそがこのバンドの魅力と思ってますが、このアルバムはその路線から若干はずれた曲も入ってます。↓これなんかはACCEPTあたりがやっててもおかしくないかんじ。
クールなイントロとキャッチーな歌メロが魅力の「Legions Of Evil」も好き!
聴きなおすとやっぱりGRAVE DIGGERを思い起こしてしまう。いかにも当時のB級ジャーマンメタルという趣。ドラムスはそんなにうまくもないくせにやたらカッコつけようといろいろやってくれちゃってて曲を危なくしてくれるけれど、その危なっかしさは逆にサウンドに緊張感をあたえている。
そういう意味で今聴くとツッコミどころはあるにはあるわけですが、だれがなんと言おうとこれはジャーマン・スラッシュメタルの名作、と断言したい!
当時のジャーマン・スラッシュといえばSODOMやDESTRUCTION、KREATORなどの、のちに「三羽烏」と呼ばれるバンドたちが、今の格調高いサウンドとは違ったハチャメチャなスラッシュをやっていて、そのイメージが強かったと記憶していますが、その三羽烏たちのどれとも違う味わい。正統派メタルファンにもアピールできるサウンドになっていました!
まあそんな考察はどうでもいいのです。いつも言うけどスラッシュメタルは速くてカッコよければそれでいいのであって、余計なこと考えずに黙って聴いて首を振っとけ、と言える作品こそが至高なのです。するとこの作品はそれであるということになる!
2作目はスラッシュ色が後退・・・入手困難になっているが無理して入手する必要もなし?
1986年には2作目「WINDS OF WAR」を発表。
「HELLISH CROSSFIRE」同様、ジャケ絵はなかなかそそられるものがあるんですけどねえ、内容はかんばしくなかった。速い曲もあるんですけどね、ACCEPTやJUDAS PRIEST寄りの正統派メタルへ接近、ていうよりたぶん「もっと売れたい」と思った(もしくはレーベルにそれを要求されたか)んでしょうね。
冷徹なスラッシュ/スピードメタルからこの半端なスタイルへの転換が、このあとの解散につながったらしい、というのも納得の、「う~ん、なにこれ・・・」というデキ。スタイルが変化しても曲がカッコよければ構わないけれど、残念ながら曲のクオリティは1stよりもだいぶダウンしているし、正統派メタルへ接近したことでヴォーカルのヘタさ加減も浮き彫りになってしまうことに。
まあけっして悪くはなかったんですが、中古品はあまり出回っておらず価格も高くなっているので、そんななかわざわざ買うってのもどうかな、とだけ言っておきましょう。まずはなにはなくとも1stの「HELLISH CROSSFIRE」を聴くのを優先するべきです! 80年代の、ちょっと速くてウルサイメタルはなんでもかんでも「スラッシュ・メタル」とくくられていた時代の空気を感じとり、その魅力を堪能できる名作です!