だいぶ前の記事で、北欧メロディック・デスの傑作としてAMORPHISの「TALES FROM THE THOUSAND LAKES」について書きました。
→思い出の北欧メタル名盤⑤:メロディック・デスの金字塔!AMORPHIS「TALES FROM THE THOUSAND LAKES」
そこで書いたように、AMORPHISには感銘を受けた私であっても、同じ時期に話題になっていたDARK TRANQUILLITYやIN FLAMESなどは私にはちっとも刺さらなかった。それはそのへんのバンドの「メロディック・デス」は、私には「デスメタルに美旋律をとってつけた」だけのようにしか感じられなかったから。対してAMORPHISのアルバムはちゃんと「美旋律がとけこんだデスメタル」に仕上がっていたから別格だったのです。デスメタルに美しいメロディをくっつける、というだけでは「メロディックなデスメタル」とは言えないんじゃないのかな~、と。
その意味でAMORPHISと同じように「別格」と感じて聴きまくったのが、フィンランドのSENTENCED。
8枚のアルバムを残してすでに解散。その歴史は初期のメロディック・デスメタル期と、後期のゴシック/メランコリック・メタル期に分けて語られることが多いですが、そのどちらにも個人的に「あの世でも聴きたいから棺桶に」と思っている作品があります。
メロディック・デスメタル期の最高傑作はやっぱコレ。
先日のAMORPHISの記事で書いたとおり90年代半ばころの私は、グルーヴだのオルタナティヴだのに毒されたメタルの凋落に絶望し、そのうえ仕事もたいへん忙しかったため、どんどんメタルから遠ざかっていました。それでもたまに音楽雑誌なんかを立ち読みしたり、CD店に寄ったりはしていて、そのなかで評判のよいものは買って聴いてみることもある・・というくらいで音楽を付き合っていたころ。
そんななか、スゴイの出た!という感じで話題になってるのを知ってCDを買い求めたのがSENTENCEDの3作目「AMOK」(1995年)でした。
これを聴いた時も、AMORPHISのときと同じくらいの衝撃を受けた。どこか荒涼とした寒々しい悲壮感のあふれるサウンド。そのなかに激情を吐き出すかのような美しいメロディを奏でるツイン・リードが炸裂する。
曲によってはIRON MAIDENを彷彿とさせるところもありますが、これはもうそれまでに聴いたことのない音楽と感じましたねえ。デスメタルといえる部分は唸るように歌うヴォーカルだけで、これはデスメタルとはいえない・・という向きもあるでしょうが、私にはこれこそが「メロディック・デスメタル」のあるべき姿と思えた。「デスメタル」ってのはうるさくて速いっていうのがその条件ではないんだなあ。
↑「New Age Messiah」はまさにメロディック・デスのあるべき姿を提示した名曲!
この作品の素晴らしさにぶっ飛ばされた私は、あとになって1st「SHADOWS OF THE PAST」(1991年)、2nd「NORTH FROM HERE」(1993年)も手に入れ聴いてみました。がしかし、そっちはまるっきり普通のデスメタルで、「これやってた人たちがたった数年でこんなに変わるもんなの?いったいなにがあったの?」とビックリ。いや初期2作もそんなに悪くはないんだけど、「AMOK」があまりにも素晴らしかったのでその落差が凄すぎたという話。ひたすら冷酷非情な冷血デスメタルから、激情と哀愁のデスメタルへの変身。素晴らしかった。
そして次の4作目からはデスメタル色はほとんど皆無となり、このバンドを形容するときによく使われる、「ノーザン・メランコリック・メタル」へと変貌を始めます。4作目「DOWN」はそのスタイルへの過渡期に出た作品。このときの変わりようもなかなか衝撃でしたが・・・
楽曲の充実度では「DOWN」が最高傑作と言えるかも
4作目「DOWN」は1997年発表。私は働いていたブラック企業でそこそこ責任ある立場になり仕事がとても忙しく、新譜をいちいちチェックすることもほとんどなくなっていましたが、SENTENCEDの新作、ということでこれは買わなきゃあ、と思って近所のCD店で購入しました。
このアルバムからヴォーカリストがのちにPOISONBLACKで活動したヴィレ・レイヒアラに交代。デス声ではないけどクリーンでもない絶妙にダーティな声の彼の歌声もなかなか衝撃だったけれども、それ以上に驚いたのは楽曲のスタイルの変化。PARADISE LOSTあたりを彷彿とさせる、いわゆるゴシック・メタル風のサウンドに。
↑イントロに続く「Noose」はあまりにシンプルな曲でデスメタル色は完全にゼロ。私も一聴したときにビックリしたのは確か。
・・・しかしそれが良かった。リフとツインリードのハモリで聴かせるメタルから、歌メロを聴かせるメタルへ変身した感じ。私の個人的な好みだけで言えば、ここまでスピードやパワーが後退するとつまんない・・・ってなりそうなものでしたがそうはならなかった。
それはなぜだったかといえば、やっぱり端的に「曲が良かった」ということに尽きる。寒々しく息苦しい雰囲気は残しながらもさらにエモーショナルになったメロディは胸に突き刺さる。
そしてこのアルバムを個人的SENTENCEDのデスメタル脱却後の最高傑作に推す理由は、これより後の作品と比較するとメタルらしいエッジやアグレッションがまだまだ残されていたところ。「Bleed」なんかは「AMOK」アルバムに入ってても違和感ない。
あまりにも美しくそして哀しい「Keep My Grave Open」や、
勇壮かつ哀愁ただようフレーズが印象的な「I'll Throw The First Rock」など、すべての曲が言い尽くせない素晴らしさ!
その後の4枚のアルバムもどれも素晴らしかったんですが、私にはヘヴィ・メタルらしさがしっかりと残っていた「DOWN」が最も刺さったし、楽曲の充実度という意味でもダントツと感じてます。
ということで「AMOK」と「DOWN」を個人的SENTENCEDの最高傑作として推したい。こういう素晴らしいバンドがもう存在しないのは誠に残念。1st以外のアルバムは容易に入手できますから、もしまだ聴いてないのであればまずは「AMOK」「DOWN」から聴いてみることをおススメしておきます!