昭和末から平成初頭のころに
メタル小僧だった私が衝撃を受けたメタル名作をふりかえる記事の続き。
今回は、デスメタルの始祖的存在のひとつである、
アメリカのOBITUARY。
デビュー以来一貫したスタイルが素敵
OBITUARYはアメリカ・フロリダ州出身のデスメタルバンド。
1980年代半ばに結成され、97年にいちど解散していますが
現在も活動している(らしい)バンドです。
これまでに10枚のスタジオ・アルバムを発表。
そのサウンドのスタイルは一貫していて、
ドロッとしたスローなパートとスラッシュ・メタル的な疾走パートを組み合わせた複雑な曲構成の上に、
何言ってるか全くわからない、断末魔のごとき激しく汚いデスヴォイスが絡んでくる、
いわばデスメタルとスラッシュメタルが融合したようなサウンド。
最近の作品はほんのちょっとだけ聴きやすくなっていますが
どの作品も多少の差はあれスタイルは基本的に変わらないので
未聴の方はどこから聴いてもいいでしょう。
しかし、まずは1989年のデビューアルバム
「SLOWLY WE ROT」から聴くことをおすすめしたい。
私もこの作品ですんごい衝撃を受けたひとり。
聴いてて不快!でもカッコいい・・というオリジナリティをすでに確立
私は発売当時に西新宿の輸入盤店でLPレコードを購入。
当時は重要な情報源であった雑誌「BURRN!」のレビューではあまり褒められてなかったけれど、
そのころには私はすでに
「こんなもんアテにならない」ということを思い知っていて、
ジャケットのチープさ加減に惹かれて即購入しました。
これこれ。こういう安っぽい絵のジャケットをみると無性に聴いてみたくなるのが
デス・メタルマニアというもの。
レコードに針を落としてみると・・・
ドッロドロに重たいリフがうねり、
徹底的に汚く呻るヴォーカルが這いずり回るデス・メタルが。
そこへ時おりズドズドズド・・というスラッシュ・ビートが織り交ぜられる。
当時同じフロリダ州から
MORBID ANGELやDEATH、DIECIDEといったデス・メタルが出てきていて、
どのバンドもいわゆるデス声を駆使してエクストリームさを演出していましたが、
OBITUARYのジョン・ターディのこのヴォーカルがいちばん衝撃的でした。
まあ~とにかく汚い。
この声でワンステージ吠えて喉がもつのかな、とか
なんらかのエフェクトをかけてるんじゃないのか、とか
考えつつも「おお~、すげえ~」と。
そのあまりに不快なヴォーカルも、聴いているうちにカッコよく思えてくるから不思議。
それはやっぱり曲自体のデキが素晴らしかったからでしょう。
私が大好きだったCELTIC FROSTを彷彿とさせる
ダークかつヘヴィ、そして要所でファストになるスラッシュ・メタル寄りのサウンドに、
その魅力に私はズブズブとハマっていきました。
そして、2ndアルバムが最高傑作!
1990年には2ndアルバムとなる
「CAUSE OF DEATH」が発表されます。
さきほど「CELTIC FROSTを彷彿とさせる」と書きましたが、
この作品にはCELTIC FROSTの名曲
「The Circle Of The Tyrants」のカバーが収録されていました。
これはもうデスメタル史上不朽の名盤と断言できる作品。
このジャケ絵のTシャツも当時持っていて、
メタルのメの字も知らない女の子と遊びに出掛ける時にこれを着たりしてましたからね、
私がモテなかったのも当然だった・・・とちょっと後悔したり。
それはともかく、この作品ではAGENT STEELやHALLOWS EVE、DEATHなどを渡り歩き
その卓越したメロディ・センスで「デス・メタルを更生させる男」とも言われていたギタリスト、
ジェイムズ・マーフィー(DJの同名の人とは別人)が参加。
ギターはリフもソロもやたらとメロディアスに。
ウルサくかつメロディアスな演奏とデス声の汚さの融合が
奇跡ともいえる偉大な作品を生み出してしまった。
OBITUARYの最高傑作はどう考えてもコレでしょう。
残念ながらジェイムズ・マーフィーはこれ1作でOBITUARYを離れてしまいますが、
まちがいなくデス・メタル界を代表するギタリストでした
(いまは違うジャンルをいろいろやっているようです)。
彼が参加したDEATHの「SPIRITUAL HEALING」も大傑作アルバム。
その後の作品も徹底してエクストリームなメタルで、
オッサンになっても日和らずにウルサい音をやり続けていることには
敬意を表したい。
今回紹介した2作品は現代のエクストリーム・メタルの源流ともいえるものと思うので、
未聴の方はぜひとも買って聴いてみていただきたい!