80年代から今にいたるまでメタル界の第一線で活動するUSのヘヴィメタルバンド、MEGADETHの(個人的)最高傑作は・・・という話を先日記事にしました。
その記事では1986年発表の2作目「PEACE SELLS...BUT WHO'S BUYING?」こそそれだ、というふうに書いたんですが、長い歴史をもつバンドだけに、ほかにも素晴らしい作品は目白押し。好みでいえば2作目がダントツだとしても、できるだけ客観視しようとすると、「最高傑作」はほかにあるともいえます。
3作目はあまり好きではなかったが・・・
前の記事の続きということで、3作目から言及していきましょう。3作目は1988年発表の「SO FAR,SO GOOD...SO WHAT!」
Amazon.co.jp So Far So Good So What
1曲目「Into The Lungs Of Hell」のカッコよさでまずは「さすがだ!」となる。
組曲っぽく続く2曲目の「Set The World Afire」は、ファンの間では評価が高いようですが、私はあんまり・・・。しかし悪くはないし、「インテレクチュアル・スラッシュ・メタル」であることが変わってないのは間違いない。
あとで、デイヴ・ムステインがこのアルバムは「ドラッグを買うカネがほしくて売れ線を狙った」と語っているのを知りましたが、冒頭の2曲を聴くかぎりでは「そんなことないだろ」と感じますね。その次にくるSEX PISTOLSの「Anarchy In The U.K.」を聴くと、なるほどたしかに、となりますが(カバーのデキ以前に、なんでMEGADETHがこれをカバー?というのが正直な感想で、どう聴いてもいらないし似つかわしくない)、アルバム全体としてはそれほど「売れたくて日和った」というふうには私は感じない。
それに続く曲も、キャッチーな歌メロを重視してるというか、複雑なリフとソロ中心のスタイルから少し変わったような印象を受けなくもないけれど、べつにポップになったわけでもなく、スラッシュメタルとしての「らしさ」はちゃんとある。
しかし、超名作である前作と、同じく超名作とされる次の作品にはさまれているってのもあって、私としては「素晴らしい作品だけど最高傑作ではないよね」というふうになるかな。
ただ、私はこのアルバムにともなうツアーで彼らが来日したときに観に行ったので、その意味で思い入れのあるアルバムなのです。ライヴパフォーマンスは正直言ってそれほど良くなかったと記憶していますが、当時は私もまだ学生で若かったし、今みたいに海外ミュージシャンのパフォーマンスを動画サイトですぐに観られるという時代ではありませんでしたからね、彼らが動くところを観られただけで満足でした。
↑先日家の片づけをしていたら懐かしいのが出てきました。1988年の来日公演のパンフレット。デイヴ・ムステインは「デイヴ・ムスティーン」と表記されています。
↑今は亡き中野サンプラザホールに、その日のために買ったMEGADETHのTシャツを着て突撃した10代のガキだった自分は、まだハラも出てなかったし髪の毛も多すぎるくらいにありました。時の流れを想えばデイヴ・ムステインが大病を患ってしまったりするのも仕方がない。
「RUST IN PEACE」でブッ飛ばされる
そして1990年。下火になってきたスラッシュ・メタルも相変わらず好きでしたが、よりエクストリームなものをもとめデスメタルに傾倒しはじめていた私は、MEGADETHの4作目「RUST IN PEACE」に出会います。
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このアルバムは出てソッコーで買いに行った記憶があります。事前に(だったと思う)伊藤政則氏のラジオ番組で、「Tornado Of Souls」が流れたのを聴いて、その素晴らしさにブッ飛ばされたから。なんだこれカッコよすぎる。
あまりに独創的かつキャッチーなリフといい、哀愁の長尺ギターソロといい、イッパツで「凄い・・」と感動。こんなリフよく考えつくよね。「インテレクチュアル・スラッシュ・メタル」らしく複雑に展開していくけれど、無駄なところは一切ない。まさに完璧な曲。次作以降さらにキャッチーな歌メロ重視になってスラッシュメタルらしさはどんどん希薄になっていくけれど、このアルバムはスラッシュメタルらしいアグレッシヴなリフと泣きのギターソロ、そしてキャッチーな歌メロが完璧なバランスで同居してて、MEGADETHならではのメタルになっていたという印象。
マーティ・フリードマンの泣きのギターももちろん最高だけど、私としてはこのアルバムの好きなところは切れ味鋭くかつメロディアスなリフ。リフのカッコよさだけをとってもこのアルバムはヘヴィ・メタル史に燦然と輝く名作といえますね。
このアルバムを象徴するのはやはり「Tornado Of Souls」のような正統的ヘヴィメタルに接近したメロディアスな曲なんだろうけど、アグレッシヴなリフリフリフで押しまくる曲も好き。「Poison Was The Cure」なんかもじつに「らしい」リフでいいですなあ。
複雑かつキャッチーなリフで構成する「インテレクチュアル・スラッシュ・メタル」のスタイルは保持したまま、エモーショナルなメロディをてんこ盛りにしたこのアルバムが、多くのファンから「最高傑作」とされるのは当然。
前の記事で「最高傑作」と言った「PEACE SELLS...」とこの「RUST IN PEACE」、どちらも好きだしどちらも最高ではありますが、どこまでも個人的好みで言えば「PEACE SELLS...」に軍配を上げる、という話。
で、5作目以降の作品は、私が社会人になったり、オルタナティヴだのグルーヴだのが流行って嫌気がさして一時メタルから距離を置いたり、そういう個人的な事情があった時期でもあって、あまり聴かなくなって、思い入れもなくとくに気に入った作品もないのです。ポツポツとチェックする感じでいちおうだいたいは聴き、スタイルの違いはあれどやはり「さすがMEGADETH」という作品が多いとは思うんですけど、4作目までがあまりに素晴らしいのでそれと比較すると・・・。
しかしまだまだ元気に活動してくれているMEGADETH。最新作を聴いた限りでは、まだまだこれから「最高傑作」を更新してくれるかもしれないと感じさせてくれました(メタル界はそういう気がまったくしないベテランバンドも多いけれど)から、今後も期待して応援することにしましょう!