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水森かおり「歌謡紀行22~日向岬~」を聴いた

毎年恒例、水森かおりの「歌で旅するアルバム」、「歌謡紀行」シリーズ最新作「歌謡紀行22~日向岬~」が発売されました!

Amazon.co.jp 歌謡紀行22~日向岬~(通常盤)

前作、前々作に引き続きカバー曲はなし。既発曲8曲、新録オリジナル曲が6曲の14曲という構成。新録オリジナルがいっぱい入ったアルバムが毎年毎年聴けるってのは演歌ファンにとってはじつに贅沢なことで、その意味でも「歌謡紀行」シリーズは問答無用で買うべきアルバム。もちろん私も予約して入手しました!今回は現時点での感想を。

表題曲「日向岬」は聴けば聴くほど素晴らしい

2023年のシングル曲「日向岬」が表題のアルバム。

ひさしぶりのメジャー調の曲で、マイナー調ドラマティック曲のほうが好きな私としては、「それもいいけど、次は泣きのマイナー曲で!」ってちょっとだけ思っていたんですが、

 

何度も聴くうちに(ラジオ「水森かおりの歌謡紀行」を毎週聴いてるので、最低でも週に1回は必ず聴くことになる。やはり歌手にとってラジオ番組ってのは重要な意味がありますねえ)、その完璧さに震えが来るようになっちゃう、ってのが弦哲也先生の偉大さというべきかマジックというべきか。メジャー調であっても、前半は抑え込まれていた感情がサビでバーっと解放される、っていう展開はマイナー調の曲のときと同じで、そこにドラマがうまれる、だから聴き手も感情を揺さぶられちゃう。「ちぎれて 消えた・・・」のあとに感じられるなんともいえない余韻が好き。そのへんは水森かおりならでは、といえるでしょう。

水森かおり「日向岬」を聴いた

 

その他過去のシングル曲は「五能線」「鳴子峡」「高遠 さくら路」「伊勢めぐり」「島根恋歌」「早鞆の瀬戸」そして絶対欠かせない「鳥取砂丘」。わりと最近の曲でかためた印象ですね。私が最も好きな曲「越後水原」が入ってない(これも「鳥取砂丘」と同じ扱いにしてほしい!)のは不満ではありますが、それは言うときりがないので仕方がない。このあたりは文句のつけようがない曲ばかりなのでとくに言うことなし。

で、新録曲はどうだったかというと・・・

う~ん、なんかピンとこない曲もあるかな。

素晴らしい「日向岬」のあとに続くのが「シラサギ」。

こちらは北海道の利尻島が舞台だそう。その利尻島には「日本百名山」にも選ばれている「利尻山」があり、そこにある観光名所「姫沼」に佇む白鷺がモチーフとのこと。

で、曲は・・・

う~む、なんか軽いというか今ふうというか、これのどのへんがご当地っぽいのかちょっとわからない。旅情ソングではなく「笑顔でいようね」的なメッセージソングとしか感じられない。はっきりいうとつまらない曲という印象でした。いかにも令和の曲っていう、平板で盛り上がるところのない、ありきたりな感じ。

まあ私は利尻山に行ったこともないし白鷺というのがどんな鳥なのかも知らないので、その景色をみたら「ピッタリの曲じゃないか!」って思う可能性もゼロじゃないけど、退屈な曲であるのは間違いない。激重ドラマティック演歌ばかりではバランスが悪いから、たまに軽い曲があってもいいとは思うけれども、これはなあ~。CDをプレイするときは申し訳ないけどスキップすることになりそうです。

 

それに続く「厳美渓」は岩手県の盤井川にある渓谷「厳美渓」がモチーフ。こちらは安心の哀愁演歌で文句なしにカッコいい。「こういうのでいいんだよ!」と言いたくなる。いいねえ。

 

それから「目黒川」。「池上線」という超絶名曲をおくりだした西島三重子の作曲。その池上線も渡る目黒川がモチーフらしい。

私のオジが五反田に住んでいたこともあって、小さいころに目黒川のあたりはよく行ったんですけど、それが昭和50年代の話で、そのころの目黒川はいつも緑色に濁って公衆便所のような猛烈な悪臭を放っていた。川を見下ろしながら「あそこに落ちたら確実に病気になって死ぬなあ~」といつも思ってたくらいで、「目黒川」と言われるとあの色とニオイがまず思い起こされて、いいイメージがないのです。しかしあのくっさいドブ川も今は相当にきれいになって、川沿いでは花見なんかをしているらしいですね。

とんでもなく汚かった目黒川しか知らない私は、「川面を染める 夕日が好きだった」という歌詞に「想像できない」ってちょっとビックリするんですけど、曲はイイですね。聴かせて泣かせようとか感動させようとかいうあざとさがない、わざとらしくないメロディでありながら、身をよじりたくなるような寂寥感がタップリ、っていうこの曲の魅力は、淡々とした歌唱の西島三重子本人のバージョンのほうが際立って感じられる気もする。

 

次が「湖上駅」。静岡県の大井川鉄道にある「奥大井湖上駅」がモチーフ。

ここも行ったことはないけれど、いかにも「秘境」っていうたたずまいを写真なんかでみると、いつかは行ってみたい、という気にさせられる。それ以外にはな~んにもないかの地を思い起こさせる静かな哀愁があふれた曲。

 

「長崎ランタン」は曲名のとおり、長崎の冬のイベント「長崎ランタンフェスティバル」をとりあげた曲。3拍子のやさしいメロディと、胡弓のサウンドが印象的。これと「厳美渓」が現時点ではいちばん好きかな。

 

「虹色のパレット」はフランスの「モンマルトル」が舞台だそう。シャンソンっぽい雰囲気でカッコいいといえばカッコいいんだけど、この曲は個人的にはあまり好きじゃないかな。イマイチという印象でした。最近はやりの曲に多いけど、最後にとってつけたように音程があがってやむをえず裏声になる、みたいな曲はどうも好きになれない。

 

と、イマイチな曲もあるなあ~と書きましたが、私が好きじゃないタイプの曲、と言うだけの話であって、このアルバムが「買うべきアルバム」であることは間違いない。全曲が最高、なんていうことはめったにあることじゃないですからね。新録曲が6曲も入ってるんだから、CDのみの通常盤の価格が3,300円っていうのも非常にリーズナブル!

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