ジャニーズ事務所の創始者、故ジャニー喜多川氏が約半世紀にわたって多数の所属タレントに性的暴行を加えていたという問題。テレビのワイドショーなんかではこの話題でもちきりになっていますね。
ジャニー氏が死去したとき、ジャニーズ事務所の弱体化で芸能界は変わるのか という記事で、その功績をほめちぎるマスコミの論調に対し「いやいやいや、性犯罪のことにも触れろよ」と思ったことを書きました。
北公次氏や木村将吾氏らの暴露本はもう遠い昔の90年代に出ていて、「週刊文春」もジャニーの性加害を特集、それについてジャニーズ側が名誉棄損で訴えて裁判となり、結果「性加害はあった」と裁判所が認めた・・・ということがあったのにもかかわらず新聞やテレビは黙殺。それなのに本人が亡くなった今になって大騒ぎして、「被害タレントが気の毒!」「全部ジャニーのせい!」みたいに言ってるのはとてつもなく気持ち悪い。
北公次氏が暴露する前でもそういう話はあったようですが、少なくとも暴露本や裁判の時点で新聞やテレビが大々的に追及していたなら、ここまでとんでもないことが続くことにはならなかったかもしれないのに。暴露を正しいものとして扱うことは自分たちにとって得策ではない、と考えたから無視したわけだ。その点について「我々メディアにも責任がある」という旨の発言をしている人もいるようだけれども、だったらそこを徹底的に検証し、それを視聴者に示すべきでしょう。
「権力を監視しモノ申す」という本来の使命をマスコミが忘れるとこういうことになる。それは政治の世界に対しても同じで、マスコミがちゃんと機能していたなら自民党などという唾棄すべき特殊詐欺集団が政権にいることなどありえず、公文書を改ざんする首相や「注視」するしか能がない首相が君臨して長きにわたって日本を停滞させることはなかったはず。
事ここに至ってメディアがやるべきことは、知っていながら黙殺したことについての検証と、芸能界にあってこういうことはほんとうにジャニーズだけのことなのかを追及することでしょう。
「タレントに罪はない」はほんとうか
事務所側は会見をひらき、ジャニーの姪である社長は退任、最年長所属タレントが社長に就任するという発表をしました。そこにはもうひとり所属タレントが出席していましたが、タレントふたりはジャニーがやってたことに対して「噂では聞いていたがまさか・・・」と思っていたみたいなことを言っていましたね。
「寝耳に水です」はもはや通用しないから「噂では聞いていた」ということにしよう、と示し合わせたんだろうなあ、というのは容易に想像がつきますが、すでに「先輩に『ジャニーさんに呼ばれて・・』と相談したら『おめでとう』と言われた」などという証言が出ちゃってる以上、それも通用しませんね。するとあの会見での発言自体ほとんどウソなんだろうなあ、というふうにしか感じられなくなってくる。これまで「ジャニーさん感謝してます」「ジャニーさんはすごかった」みたいな話ばっかりしてた人たちが突然「鬼畜」「なんてことをしてくれたんだ」とか非難し始めているのもなんとも違和感ありあり。「ジャニーさんは変態で、我々にひどいこともしたけど、そのおかげで我々は有名になれたんだよ!」とかいう正直な奴がひとりくらいいてもよさそうなもんだけど。
この問題を受けて「ジャニーズタレントはCMに起用しない」と表明する企業もあるようで、それに対し「タレントには罪はないのに」とかいう声もありますね。しかしほんとうにそうか。ほんとうに性加害について知らなかった、もしくは性加害を受けて「自分だけのことだと思っていた。自分さえ我慢すれば・・・」と考えて沈黙していたのならそれはたしかに「罪はない」んでしょうが、どうやらそうではないようにしか見えない。すると「知ってたけど、『それがジャニーズ事務所であり芸能界とはそういうところ』だから」という認識で、自分の後輩がひどいことされて泣いていても「我慢しろ。我慢すればデビューできる」とかいうふうにしていたんだろう、ということになり、ならば「罪はない」どころの話ではないのでは。このへんはビッグモーターの問題と構造は似ている。ビッグモーターの社員は保身のために反社会的行為に手を染め、ジャニーズタレントも自分のために事務所の犯罪を見て見ぬふりをした(それどころか新社長は自らも性加害をしていたという驚愕の報道も出ちゃってる)。まあなかには「お手付き」にならなかったりそれを拒否したにも関わらず売れた、っていう人もいるんでしょうから一概には言えませんが、少なくとも公然の秘密でみんな知っていたのであれば、所属タレントは「今になって『鬼畜』とか言うくらいなら、なぜ今まで見て見ぬふりをしていたの?」と非難されても仕方がないのでは。
ジャニーズ事務所には消滅してもらったほうが、日本のエンタテインメントにとっては喜ばしい
いずれにしろ、ジャニーズ事務所がおくりだすエンタテインメントがどんどんつまらなくなっていったのは、ジャニーの性加害に耐えたやつがデビューできる、というその風土のせい、っていうのはあるんでしょう。とくに目立った芸を持たなくても「お手付き」になりさえすればデビューできる、というふうになっていれば、(そういう人はあまりいなかったんだろうと思いたいが)芸を磨くことを考えずに「お手付き」になることを目指す、とにかくジャニーの目にとまることを目標にする、という社風になるでしょう。
そんなだからジャニーズのエンタテインメントはつまらなかったんだな。個人的には少年隊や光GENJIあたりがやっていた曲は嫌いじゃないし、「名曲」と言ってもいい曲もたくさんあったと思っているけれど、それは筒美京平とかのようなスゴイ作曲家に曲を書いてもらったから、というだけのことで、それを歌うのが光GENJIや少年隊でなかったとしても、べつになんの差しさわりもなかった。YOU TUBEとかでみると信じられないくらいドヘタですもんね。いまテレビなどをにぎわしているジャニーズタレントたちも、「その人ならでは」というものを確立している人は、少なくとも音楽の面ではひとりもいない。DA PUMPなんかと比較するともう雲泥の差で笑っちゃうくらい。ジャニーが亡くなったときの芸能界への貢献をほめたたえる論調に疑問を抱いたのはこのへんが原因。芸能界をつまらなくしたのは奴でしょ。
個人的にはこれを機会にジャニーズ事務所には消滅してもらって、「芸はないけど事務所の力で売れる」という芸能人にも退場してもらって、ほんとうに客を楽しませることができる芸をもつ人だけがほんとうに売れる、というふうに芸能界が変わってくれることを期待したい。そうすれば「CDが売れない」なんてこともないだろうし、「テレビ離れ」なんてこともなくなるかもしれない。
それにしても、「盛者必衰」というのはいつどの世界においても真理なんだなあ~、と痛感します。テレビ局はまだジャニーズタレントをつかうつもりのようですが、スポンサー企業が「使わない」と言い始めている以上、それもいつまでも続けられないでしょう。するとジャニーズ事務所の崩壊は時間の問題ということに。所属タレントは早いところ別の事務所に移籍して「ジャニーズとは無関係」というアピールをしたほうがいいんでしょうが、それもなんか白々しいとか恥ずかしいというふうに視聴者にはみえるかもしれない。少なくとも「ジャニーズ」という名前は変えたほうがいいんじゃないか。今後の動向に注目したい。